ヴィーガンが卵を食べない理由|雌鶏を檻から解放し、雄ひよこを粉砕機から救うため

手のひらに乗った可愛いひよこ

本来1年間に10~15個しか卵を産まない赤色野鶏の雌を、年間300個以上の卵を産む採卵鶏(さいらんけい)に品種改良し、約2年間卵を産む機械として酷使した挙句、屠殺して安い肉として売る、これが鶏卵工場のやり方です。

採卵鶏はB5サイズの用紙よりも狭い檻に閉じ込められ、羽を広げることも体の位置を変えることもできず、過剰産卵のために多くの採卵鶏が骨折や脱出症(卵管と直腸が産卵時に外に飛び出す)、卵塞症(卵が卵管内に詰まる)などの病気に罹り、ひどく苦しんでいます。

孵化場で生まれた雄のひよこは鶏卵工場においては無価値なため、すぐに粉砕機に投げ込まれて生きたままミンチにされます。

ヴィーガンが卵を食べない理由は、この残酷な鶏卵産業をすべて廃止させたいからです。

本日はヴィーガン歴15年以上の双子が、「なぜヴィーガンは卵を食べないのか」について詳しく解説いたします。

この記事を書いた人
菜食双子
双子
  • 料理人
  • ヴィーガン歴15年以上
  • NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
目次

ヴィーガンが卵を食べない4つの理由

卵と目玉焼き

ヴィーガンが卵を食べない理由は、次の4つです。

  1. 「卵を産む機械」から雌鶏を解放するため
  2. 生きたままミンチにされる雄のひよこを救うため
  3. 家畜由来のパンデミックを回避するため
  4. 卵が原因の病気から体を護るため

それでは、一つずつ解説します。

理由①「卵を産む機械」から雌鶏を解放するため

一般的な鶏卵工場では、一つの建物に3~6万羽の雌鶏を収容することができます。

まずは次の動画で、鶏卵工場の実態をご確認ください。

(上映時間:1分45秒)*自動翻訳機能あり

アメリカの卵工場の実態

日本で販売される卵は、99%が鶏卵工場で生産されており、不衛生なケージ内で病気の蔓延を防ぐために、月1で雌鶏の全身に殺虫剤が吹きかけられています。

以下にご紹介する動画をご覧いただくと、鶏卵工場はどこの国も全く同じ飼育法を用いていることが分かります。

スーパーの卵売り場には、安価な鶏卵工場の卵と並んで「放し飼い・フリーレンジ」や「平飼い・ケージフリー」などの名前がついた値段の高い卵があります。

放し飼いや平飼いという言葉には、「雌鶏に負担をかけないで生産した卵」というイメージがあるので、動物福祉に気を使う人たちに人気があります。

ただしそれらの飼育環境で育てられても、後述する「雄ひよこの処分」は鶏卵工場と同じように行われており、雌鶏が2年後に屠殺場へ送られることに変わりはありません。

品種改良された「採卵鶏(さいらんけい)」特有の病気

現在の鶏卵業界(鶏卵工場、放し飼い農場、平飼い農場)では、品種改良された「採卵鶏」を飼育しています。

採卵鶏の先祖に当たる赤色野鶏の雌は年に10~15個くらいの卵しか産まないのですが、採卵鶏は年間300個以上(1日1個ペース)もの卵を産むように改良されています。

その「毎日卵を産む」という不自然な改良が、採卵鶏にさまざまな病気を引き起こしているのです。以下に採卵鶏が患っている主な病気をご紹介します。

  • 骨粗鬆症・・・卵殻の生成にはカルシウムを大量に使うため、過剰な産卵がカルシウム不足を引き起こし、骨をスカスカにしてしまう。
  • 骨折・・・卵の過剰産卵が原因の骨粗鬆症により、骨が弱くなって引き起こされる。鶏卵工場の採卵鶏の97%は骨折している。
  • ケージ層疲労・・・運動不足、カルシウムやリンの不足により、筋肉の衰弱や疲労が起こって卵の殻も薄くなる。
  • 卵黄性腹膜炎・・・発育中に破裂した卵、または卵管に遺残した卵の卵黄物質が腹膜に沈着することで起こる炎症反応。
  • エッグドロップ症候群・・・卵の生産量が急激に減少すること。採卵鶏のウィルス感染によって起こる。
  • 卵塞症(らんそくしょう)・・・卵が卵管内に詰まり、産卵しようとすると酷く苦しむ状態。最後は死に至る。
  • 脱出症・・・卵管と直腸が産卵時に外に飛び出してしまい、中に引っ込まなくなる状態。感染症を引き起こして最終的には死に至る。

本来の鶏の寿命は10年です。しかし尋常ではない産卵回数のせいで、2年と待たずにケージ内で病死する採卵鶏がたくさんいます。

2年間の苦しい日々を生き残ったとしても、そのころには卵の産卵量が減少するので屠殺場へと送られます。

こうして毎年2億羽の採卵鶏が殺されているのです。

雌のひよこの口ばしの切断

本来走り回るのが大好きな鶏が、一歩も動けないように狭いケージに拘束されているのですから、そのストレスたるや計り知れないものがあります。

そのストレスのせいで鶏がお互いをつつき合って共食いをしないように、ひよこのときに口ばしが切り落とされます

ひよこの口ばし切断方法には、機械式(ハサミのような刃)、熱刃式(加熱したブレード)、電気式(電流を流す)、赤外線式(赤外線を当てる)などがあります。

次の動画で、ひよこの口ばし切断の様子をご覧ください。

(上映時間:1分30秒)

ひよこの口ばし切断のやり方

鶏の口ばしの中には血管や生体組織があるため、先端までとても敏感になっています。口ばしを切断されたひよこが出血するのも、痛みでエサや水を摂れなくなるのもそのためです。口ばし切断の途中で死んでしまうひよこもいます。

鶏はストレスを与えられない限り、お互いをつつき合って羽をむしったり、怪我をさせたり、共食いしたりはしません。これは、劣悪な環境下で密集飼育をする「鶏卵工場にしか起きない問題」なのです。

鶏卵工場で行われる強制脱皮

鶏卵工場では強制脱皮と呼ばれるプロセスを行います。

これは産卵量が減少して屠殺場行きが決まっている採卵鶏たちに、最後の力を振り絞ってできるだけ卵を産ませ、利益を絞り取るプロセスです。

次の動画は、採卵鶏の「強制脱皮」の様子です。

(上映時間:4分48秒)

卵工場で行われる残酷な強制脱皮

やり方は7~14日間、雌鶏に水もエサもやらずに飢えさせます。その間に雌鶏は多くの羽を失い(脱皮)、2週間ほど産卵は止まります。

そしてその断食期間が終わると、ピーク時よりも量は減りますが、雌鶏は再び卵を産み始めるのです。

しかし長くは続きません。雌鶏たちは最後の力を振り絞って産卵しているからです。そうして産卵期間をぎりぎりまで延ばしてから、雌鶏を屠殺場に送るのです。

採卵鶏の体はあまりにも「使い果たされている」ため、屠殺しても普通の食肉としては売れず、顆粒だしや、チキンエキス、ペットフードなどの原料となります。

ヴィーガンは「卵を食べない」ことで需要を減少させ、鶏卵ビジネスの衰退と廃止を招き、一日も早く「卵を産む機械にされた雌鶏たち」を解放したいのです。

理由② 生きたままミンチにされる雄のひよこを救うため

採卵鶏は5:5で雄と雌を産みます。そのため採卵鶏を生産する孵化場で孵化するうちの半分は「雄のひよこ」です。

採卵鶏用に改良された鶏は、食肉用の鶏のように胸や足の筋肉が大きく育ちません。成長スピードも遅いので、雄のひよこを食肉用として育てるにはコストがかかってしまいます。

そのため、雄のひよこは孵化してすぐに「廃棄」されるのです。

次の動画は、雄のひよこが粉砕機に投げ込まれて生きたまま「廃棄される」様子です。

(上映時間:1分01秒)

雄ひよこの処分方法

雄のひよこの処分方法は他にもあります。鶏卵工場の規模や国によってもやり方が違います。

【孵化した雄ひよこの殺し方】

  • マセレーター(粉砕機)に投げ込んで生きたままミンチにする。
  • 電流を流して感電死させる。
  • ビニール袋に詰め込んで窒息死させる。
  • 二酸化炭素(CO2)で毒殺する。
  • 脊柱スナップ(頭蓋骨が脊柱から脱臼するように首を引っ張って折る方法)で殺す。
  • 水を溜めた樽に投げ込んで溺死させる。

こうして世界中で、毎年70億羽もの雄のひよこが殺されています。これは鶏卵ビジネスが存在するために起こる悲劇です。

ヴィーガンが「卵を食べない」のは、「ひよこを孵化させないため」です。孵化させるということは、生きたままミンチにされる雄ひよこが生まれるということだからです。

「孵化してすぐに殺される雄ひよこ」をこの世に誕生させないために、ヴィーガンは卵を食べることを拒否するのです。

理由③ 家畜由来のパンデミックを回避するため

鶏卵工場や養鶏場には、何十億羽もの採卵鶏やブロイラー(食肉用の鶏)が密集して飼育されており、暗くて湿気が多く非常に不衛生なため、病原菌の感染と蔓延に適した環境になっています。

鶏卵工場や養鶏場で発生した鳥インフルエンザのウイルスが突然変異した場合、工場内でひしめき合う鶏たちに急速に感染拡大します。

そのようにして変異したウイルスが鶏卵工場や養鶏場で働く人々に感染し、そこから波及してパンデミックが起こる可能性があるのです。

新たに発生した人間の感染症のうち、75%が人獣共通感染症(動物由来感染症)です。人獣共通感染症のウイルスは、家畜の糞尿を介して人に伝染します。

鶏卵工場や養鶏場から発生する人獣共通感染症には、鳥インフルエンザ、鳥結核、サルモネラ症、オウム病(クラミジア病)、クリプトスポリジウム症(腸が障害を受ける寄生虫病)、カンピロバクター症(消化器系腸炎)などがあります。

家畜から人へ感染したウイルスが、また人から家畜へ感染する「スピルバック」はより毒性が強く、感染力の強い新たなウイルス株を出現させてしまう恐れがあります。

この世に家畜産業が存在していなければ、人獣共通感染症(動物由来感染症)によるパンデミックがここまで問題になることはないのです。

次の動画では、「パンデミックを回避する方法」が解説されています。

(上映時間:13分13秒)*日本語字幕あり

次のパンデミックを避ける方法

ヴィーガンが増加して「卵を食べない人」が増えれば、鶏卵工場は衰退して廃止されます。そうなれば家畜の糞尿に接する人はいなくなるので、人獣共通感染症(動物由来感染症)が広まる不安はなくなります。

次のパンデミックを起こさないためにも、家畜に一切頼らないヴィーガンの生き方は、これから重要になってくるのです。

理由④ 卵が原因の病気から体を護るため

3つの卵焼き

ヴィーガンが卵を食べないのは倫理的な理由からですが、健康面から見ても卵を食べることはお勧めできません。

卵にはコレステロール(100g/33mg)と飽和脂肪酸(100g/3.3g)が豊富に含まれているため、摂取するとコレステロール値が上昇し、心血管疾患、糖尿病、癌などのリスクが増加します。

また卵の白身に含まれる凝縮されたタンパク質は、インスリン様成長因子-1(IGF-1)のレベルを上昇させ、癌細胞の増殖を促進して癌を発症するリスクを高めます。

さらに卵の黄身に含まれるコリンは、腸内でトリメチルアミン (TMA) に変換され、肝臓でトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)に酸化されると、炎症を促進してさまざまな病気を引き起こす可能性があります。

以下に、TMAOのレベルが高いと引き起こされる病気をまとめました。

  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心臓発作
  • アテローム性動脈硬化
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 炎症性疾患
  • 肝機能障害
  • 神経疾患
  • 結腸がん
  • 前立腺がん

このトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)のレベルを上昇させるのは、卵、肉、魚、乳製品などの動物性食品です。

植物にもコリンは含まれていますが、植物由来のコリン(大豆製品、豆類、全粒穀物、雑穀、アブラナ科の野菜、きのこ)は、いくら摂取してもTMAOのレベルを上げる心配はありません。

世界中で卵が「完全栄養食」や「完全なタンパク質」と言われているのは、鶏卵産業のマーケティングが大成功したからです。

実際は人体にとって過剰栄養のデメリットしかない卵を、人の健康に重要なものだと信じ込ませ、数々の病気を作りだしているのです。

まとめ:ヴィーガンの目的は鶏卵業界を衰退させて、雌鶏と雄ひよこにもう一度「家族の愛」を感じてもらうこと

草むらで遊ぶ母鶏とひよこ

今回は、「ヴィーガンが卵を食べない理由」について解説しました。

「鶏は3歩歩くと忘れる」という言葉のおかげで、鶏は知能の無い動物のように思われていますが、それは全くの間違いです。実際の鶏は、猫や犬などと同等の認知能力を持つ「賢い」動物です。

鶏は家族や仲間を大切にし、100以上の顔(人間も含む)を覚え、30種類以上の発声を使い分けてコミュニケーションを取り合います。一羽一羽性格も違い、元気いっぱいな子もいれば、恥ずかしがり屋の子もいます。

鶏はとても愛情深く、母鶏はひよこがまだ孵化しないうちから卵に話しかけて大切に育てます(卵の中から返事をするひよこもいます!)。そのため、産まれた瞬間からひよこは母鶏の声が分かるのです。

このように社交的で愛に満ちた生きものを、B5サイズの用紙より狭い檻に押し込め、排泄物にまみれさせながら死ぬまで卵を産む機械として使い倒し、廃鶏として処分しているのが鶏卵業界です。

幸いなことに日本でも、雌鶏を苦しめずに卵の風味が楽しめる「代替え卵」が手に入るようになりました。

代替え卵は、現在4社から販売されています。

  1. 2foods「Ever Egg」
  2. キューピー「HOBOTAMA」
  3. UMAMI UNITED「UMAMI EGG」
  4. アジテック・ファインフーズ「ソイタマ」

もちろん卵そのものの味はしませんが、よく似ているのでまったく違和感はありません。食感は柔らかいスクランブル・エッグです。

ヴィーガンをはじめとする多くの人が卵をやめて「代替え卵」を利用するようになれば、卵の需要は減少してゆき、鶏卵業界を廃止に追い込むことができます。

ヴィーガンの望みは、採卵鶏と雄ひよこを再び「愛に溢れた鶏の家族」に戻し、草むらを思う存分走り回らせてあげることなのです。

双子

鶏は眠っているときに夢を見るんだって。採卵鶏は狭い檻の中で、どんな夢を見てるのかな。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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