ヴィーガンが乳製品を食べない理由|雌牛と子牛を酪農という地獄から救うため

瓶入りの牛乳をグラスに注ぐ様子

多くの人が「乳牛は自然に乳を出す動物」だと思っています。しかし乳牛も人間と同じ哺乳類です。哺乳類の雌が乳を出す理由は一つしかありません。

産んだ子を育てるためです。

では、なぜ酪農場の乳牛が「乳を自然に出す生きもの」だと勘違いされるほど、毎日毎日休みなく乳を出すのかというと、休むことなく「妊娠と出産」をさせられているからです。

妊娠してから9か月後に子牛が産まれると、乳を飲ませないようにすぐに母牛から引き離し、子牛が雄ならば殺して仔牛の肉として売り、雌ならば母牛と同じ運命を辿らせるために調合ミルクで育てます。

本来牛の寿命は20~25年ですが、妊娠出産を繰り返す酪農の乳牛は4~5年で病死するか、乳の生産量が減少して屠殺されるかして命を落とします。

酪農業界で飼育される乳牛と雄の子牛は「地獄」を生きているのです。

ヴィーガンが牛乳を飲まず、乳製品も食べない理由は、雌牛と子牛を「酪農という地獄」から救い出したいからです。

本日はヴィーガン歴15年以上の双子が、「なぜヴィーガンは乳製品を食べないのか」について詳しく解説いたします。

この記事を書いた人
菜食双子
双子
  • 料理人
  • ヴィーガン歴15年以上
  • NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
目次

ヴィーガンが乳製品を食べない3つの理由

スーパーに並んだ乳製品

ヴィーガンが乳製品を食べない理由は、次の3つです。

  1. 酪農場の雌牛を「牛乳の製造マシーン」から解放するため
  2. 酪農場に生まれた雄の子牛を救うため
  3. 牛乳や乳製品の害から自分の体を護るため

それでは、一つずつ解説します。

理由① 酪農場の雌牛を「牛乳の製造マシーン」から解放するため

コンクリート製の狭い牛舎に鎖でつながれた乳牛たち

乳牛は人間と同じ哺乳類なので、乳を出すためには「妊娠」と「出産」をしている必要があります。

まずは次の短編ドキュメンタリーで、酪農の現実をご確認ください。

(上映時間:4分39秒)*自動翻訳機能あり

牛乳: 母親の視点からの短編映画

牛乳の生産方法をさらに詳しくご理解いただくために、以下の動画リストも併せてご視聴ください。

それでは次に、乳牛の過酷な一生についてご紹介します。

酪農場の乳牛がたどる過酷な一生:レイプと乳房炎

酪農場の雌牛は、生後15か月になると農場労働者から最初の人工授精(レイプ)を受けます。

人工授精(レイプ)に使われる精液は、次の方法で用意されます。

  • 思春期を迎えた雄牛を(金属の道具、または手を使って)「強制的に射精」させて確保する。
  • 「牛の精液収集場」から購入する。

人工授精(レイプ)のやり方ですが、まずは雌牛を「レイプ・ラック(強姦枠)」と呼ばれる場所に押し込み、農場労働者が雌牛の膣に腕を突っ込んで子宮内に雄牛の精液を注入して授精させます。

雌牛が妊娠して(牛の妊娠周期は人間と同じ9カ月)出産したら、子牛が乳を飲んでしまわないように直後に引き離します。

  • このとき産まれた子牛がならば、へそ脳がついたままの状態ですぐに殺して仔牛肉として売ったり、仔牛肉を生産する子牛農場に売り飛ばしたりします。*詳しくは後述
  • 産まれた子牛がならば、調合乳を与えて乳牛に育てます。

そして出産したばかりの母牛の乳を搾乳します。乳牛の初乳(出産後24~48時間)は、アンチエイジングや免疫力向上に効果があると謳われる「コロストラムサプリ」の原料として売られます。

自然界の母牛が子牛のために一度に出す母乳の量は最大で2リットルですが、酪農の乳牛には乳の出を促進する成長ホルモン剤が投与されるので、一度の搾乳で26リットルもの乳を出します。

成長ホルモン剤の効果で乳牛の乳腺は異常に膨張し、乳房は床につくほど肥大しています。あまりにも重くなった乳房は乳牛の足の関節にダメージを与え、跛行(歩行障害)も引き起こします。

そしてほとんどの乳牛は乳房炎に罹患しています。乳房炎とは、排泄物で汚れた床や搾乳機に付着している細菌によって引き起こされる乳房の感染症です。

どの国の牛乳にも「膿」や「血液」が一定量含まれているのは、この乳房炎のためです。乳房炎は搾乳のときに激しい痛みを伴い、これが原因で死亡する乳牛もいます。*詳しくは後述

乳牛は出産してから10ヶ月間乳を出しますが、1~2か月経つと乳量が落ちてきます。そこで再び乳牛をレイプ・ラック(強姦枠)に押し込んで人工授精(レイプ)し妊娠させます。このようにして、雌牛が生きている間はずっと妊娠・出産状態をキープするのです。

本来牛の寿命は20~25年ですが、4~5年経っていよいよ乳の出が悪くなったら乳牛を屠殺場に運んで行って殺します。「使い果たされた」乳牛の肉は非常に安く売買され、激安の肉、惣菜、加工食品、ファストフード、ペットフードなどの原料となります。

ちなみに、屠殺される時の乳牛は(もちろん)妊娠しているので、お腹を割くともれなく牛の胎児が出てきます

酪農業界で慣行となっている乳牛への虐待

毎日の過剰搾乳による苦しみのほかにも、乳牛が耐えなければならないことがあります。

それは農場労働者から受ける虐待行為です。

以下の動画リストで、乳牛が農場労働者からどのような虐待を受けているかをご覧ください。

Animal cruelty on dairy farms」でユーチューブ検索をかければ、乳牛や子牛への虐待動画がたくさん出てきます。農場労働者による家畜動物への虐待は日常茶飯事なのです。

もしも雌牛と人間の女性の立場が入れ替わったら

次の文章をお読みいただき、自分のこととして想像してみてください。

ある日、あなたは男に監禁されてレイプされ、妊娠してしまいました。

戸惑いながらも9か月間大切にお腹の中で育み、赤ちゃんを出産します。

赤ちゃんは、男の子でした。

あなたが赤ちゃんを抱こうとした瞬間、赤ちゃんは男に取り上げられ、ナイフで首をかき切られて殺されてしまいます。

驚きでうろたえているあなたの乳房には、痛みを伴う搾乳機が取り付けられ、母乳が吸い取られていきます。

なぜ?何のために?とあなたはパニックになって男に聞きました。

男は言います「お前の母乳を飲みたがっている人がいるからさ。いい値段で売れるんだよ」と。

母乳をシリアルにかけたり、コーヒーや紅茶に入れたり、料理やお菓子に使うために、母乳が欲しいという人がたくさんいるのだそうです。

あなたはその日から監禁場所で毎日母乳を吸い取られ続け、出産から1~2か月経ちました。

するとあなたは再び男にレイプされて、妊娠させられてしまいます。

妊娠中も、ずっと母乳の搾乳は続きました。

9か月後に生まれたのは、女の子でした。

その子も出産直後にあなたから取り上げられますが、殺されずに別の場所で粉ミルクで育てられます。

そうしてその女の子が10歳くらいで思春期を迎えると、男は女の子をレイプして妊娠させてしまいました。

あなたとまったく同じことを、あなたの娘もされてしまったのです。

あなたたちを監禁している男からの虐待は、それはそれは酷く、あなたも娘も毎日怯えながら暮らしていました。

あなたはそれから何回もレイプされ、妊娠し、出産し、母乳を搾乳され、体はボロボロになり、乳腺炎に苦しみながら生活しているうちに、母乳の出も悪くなってきました。

ある日あなたは車に乗せられて、人里離れたところに連れて行かれます。

車から降りた瞬間、あなたは銃で頭を撃ち抜かれて殺されてしまいました。

生暖かい血が噴き出し、意識が遠のいていく中で、あなたは何を思うでしょうか?

悲しみですか?怒りですか?

殺された息子たちを恋しく思いますか?

あなたと同じ運命を辿る娘たちを哀れに思いますか?

それとも、すべての苦しみから解放される喜びを感じるのでしょうか?

あなたが飲んでいる牛乳は、そうした母と子の苦しみの結晶なのです。

続いて次の動画をご覧いただき、乳牛の代わりに人間の母親が搾乳される世界を体験してみてください。

(上映時間:20分10秒)*自動翻訳機能あり

牛の代わりに人間を搾乳したらどうなるか

もしこれが現実だったなら、あなたは「乳」を飲みたいと思いますか?

ヴィーガンが牛乳も乳製品も拒むのは、牛乳が恐ろしいほど残酷な過程を経て生産されているからです。

ヴィーガンは、酪農業界を一日も早く廃止させ、雌牛を「牛乳の製造マシーン」から解放してあげたいと思っているのです。

理由② 酪農場に生まれた雄の子牛を救うため

小さな檻の中に入れられた5頭の雄の子牛

酪農場に生まれた雄の子牛には、4通りの運命が待っています。

運命1:産まれてすぐに殺される

へその緒がまだ付いた状態で喉をかき切られて殺され、肉の臭みの無い柔らかい仔牛の肉として販売される。

運命2:子牛農場に売られる

子牛農場に売られ、身動きがとれないほど小さな檻の中に閉じ込められる。これは子牛を動けないようにして(筋肉を使えない状態にして)柔らかい肉質を保つため。

排泄物まみれの不衛生な環境で病気にならないように、抗生物質と化学薬品が大量に混ぜられた調合ミルクで16~18週間育てられたのち屠殺され、ミルクの香りのする柔らかい仔牛の肉として販売される。

運命3:レンネットの採取用に殺される

チーズの凝固剤として使われるレンネット(乳離れしていない子牛の第4胃袋の消化液。母乳を消化するための酵素)を採るために殺され、レンネット採取後は解体して仔牛の肉として販売される。

運命4:乳牛を妊娠させるための精液採取に使われる

酪農場に残された雄の子牛は、思春期に達すると酪農場の労働者によって、金属の道具か手を使って強制的に射精させられ精液を採取される。

その精液は、酪農場の雌牛を妊娠させるのに使われる。

役目が終わると食肉業者に売られ、屠殺されて肉として販売される。

次の動画リストをご覧いただくと、「雄の子牛の一生」がどんなものか、さらに詳しくご理解いただけます。

子牛は生涯「愛される」という感覚を知らずに死んでゆきます。牛乳を飲んだり乳製品を食べたりするということは、このような子牛を何頭も何頭も生み出し続けるということです。

牛乳と乳製品の摂取を拒否するヴィーガンは、酪農産業を衰退させて雄の子牛を悲しい運命から救おうとしているのです。

理由③ 牛乳や乳製品の害から自分の体を護るため

大きな瓶入り牛乳をこぼしながらがぶ飲みする女性

ヴィーガンが牛乳や乳製品を摂らないのは倫理的な理由からですが、健康面から見ても牛乳や乳製品の摂取はお勧めできません。

牛乳や乳製品が人の健康に有害であるとされる理由を、以下にまとめました。

  1. 牛乳を飲めば飲むほど骨は弱くなる
  2. 日本人の95~98%は乳糖不耐症
  3. 牛乳や乳製品がインスリン様成長因子-1 (IGF-1) を増加させる
  4. 牛乳や乳製品に残留する「性ホルモン剤」への懸念
  5. 牛乳や乳製品に残留する抗生物質が招く「抗生物質耐性」
  6. 牛乳に混入している「膿」
  7. 牛乳や乳製品に残留する汚染物質

それでは、一つずつ解説します。

牛乳を飲めば飲むほど骨は弱くなる

私たちは長い間、「牛乳を飲むと骨が強くなる」という酪農業界のプロパガンダに洗脳されてきました。

「牛乳が骨を強くする」というのが真実ならば、なぜ世界で最も多く乳製品を摂取する国の人々が、世界で最も骨粗鬆症を発症しているのでしょうか?

「牛乳や乳製品の摂取と骨の健康の関係性」については、世界中の研究機関が研究結果を公表していますので、以下にいくつかご紹介します。

1994年にオーストラリアのシドニーで行われた高齢の男女を対象とした研究では、乳製品の摂取量が多いほど骨折リスクが増加し、股関節骨折のリスクは約2倍になることが分かりました。

約10万人の男女を対象にした「牛乳の摂取量と死亡率と骨折のリスクの調査」では、1日にコップ3杯以上の牛乳を飲んだ人は牛乳を飲まない人(もしくは1日に1杯以下)に比べて、股関節骨折のリスクが60%高まり、死亡率も93%増加することが明らかになっています。

アメリカで行われた研究では、96,000人以上の閉経後の女性と50歳以上の男性を22年間に渡って追跡調査し、10代のときに牛乳の摂取量が多いと高齢になってから股関節骨折のリスクが増加することを突き止めました。特に男性は、大腿骨頸部骨折のリスクが9%高まると結論付けています。

2005年に出版された小児科学誌の文献には「牛乳は子供の骨を強化しないし、骨折の発生を防ぐこともできない」と明記されています。

骨を強くするはずの牛乳や乳製品の摂取が「骨の健康に有益でない」理由は、牛乳や乳製品に含まれる動物性タンパク質が骨からカルシウムを浸出させ、尿中へのカルシウム排出を促進してしまうからです。

牛乳や乳製品の摂取量が多ければ多いほど尿中へのカルシウム排出が増加し、高カルシウム尿症を引き起こします。これが原因でカルシウムの恒常性が崩れ、骨の健康に影響が出てしまうのです。

日本人の95~98%は乳糖不耐症

乳糖不耐症」とは、乳糖を分解する「ラクターゼ」という消化酵素が体内で生成されないために、牛乳や乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を消化吸収できない状態のことです。

酪農業界や政府は認めたくないでしょうが、世界人口の約68%の人は乳糖不耐症です。

アフリカ系の70~75%、ネイティブアメリカンの74~78%、ヒスパニック系の53~58%、そして日本を含むアジア系はダントツで多い95~98%の人が乳糖不耐症です。

牛乳や乳製品を問題なく消化できるのは、乳糖不耐症率が5~25%と低い、白人系の人たちだけとなっています。

乳糖不耐症の人は乳糖を分解することができないので、牛乳や乳製品を摂取したときに消化器系に問題が起こり、次のような症状が発生します。

  • お腹の張り
  • 頻繁なおなら
  • 腹痛
  • 腹部のけいれん
  • 胃のむかつき
  • 下痢
  • 吐き気・嘔吐

先ほど「世界の68%が乳糖不耐症」と言いましたが、人は生まれながらに乳糖不耐症なわけではありません。母乳を飲む乳幼児期には、母乳の乳糖を分解する酵素の「ラクターゼ」がたくさん生成されています。

ですが成長に伴ってラクターゼの生成は減少していき、4~5歳でほとんど作られなくなります。なぜなら母乳を飲まなくなるので、母乳の乳糖を分解する必要がなくなるからです。

この「ラクターゼの減少」は、すべての哺乳類に起こります。成長したあとも乳を飲み続ける動物は一匹もいません。しかし唯一人間だけは離乳したあとも母乳を欲し続け、他の動物の母乳を奪ってまでも飲み続けているのです。

乳糖不耐性に治療法はありません。なぜなら乳糖不耐性は「治すべき疾患」などではないからです。

人間が毒を食べてしまったときには、吐いたり、お腹が痛くなったり、酷ければ入院したりしますよね。それと同じことが、5歳を過ぎた日本人の体に起こっているだけなのです。

牛乳や乳製品がインスリン様成長因子-1 (IGF-1) を増加させる

インスリン様成長因子-1 (IGF-1) 」とは、骨格筋や骨、臓器組織、血管の内層など、人体のほぼすべての細胞や器官の成長と分裂を促進するホルモンです。IGF-1は、脳の健康や代謝調節などの重要な機能に関与しています。

しかしIGF-1の「細胞増殖を促進する」という能力には「アポトーシス(プログラムされた細胞死)を阻害する」という側面があるため、癌の発生を促進してしまいます。

その癌の発生を促進するIGF-1の産生を増加し、IGF-1の血中濃度を上昇させるのが、牛乳と乳製品などの動物性食品というわけです。

ドイツのバイエルン州で行われた研究では、牛乳や乳製品の摂取量を1日当たり200g増やすとIGF-1濃度が10.0μg/L 高くなり、400g増やすとIGF-1濃度が16.8 μg/L高くなるという結果まで出ています。

以下に、「牛乳や乳製品と癌のリスク」に関する研究結果をいくつかご紹介します。

ロマリンダ大学保健学部の研究によると、52,795人の女性を8年間追跡した健康調査で、乳製品の摂取量が多いと乳がんのリスクが50%増加し、摂取量に応じては最大80%も増加するということが分かりました。

アメリカで実施された研究では、21,660人の参加者を28年間追跡調査し、1日に牛乳や乳製品を2.5カップ以上摂取する人は、0.5カップ以下の人よりも前立腺がんのリスクが34%高くなることが証明されました。

全脂肪乳製品と死亡率の研究では、早期悪性乳がんと診断された1893人の女性のうち、高脂肪乳製品の摂取量が多かった人ほど死亡率が高くなることが実証されました。1日あたり0.5カップを摂取するだけでも、死亡リスクは大幅に増加すると判明しています。

スウェーデンで行われたマンモグラフィー観察調査では、38~76歳の61,084人の女性を13.5年間追跡調査し、1日に2カップ以上の牛乳を飲む女性は牛乳を飲まない女性に比べて、漿液性卵巣がんのリスクが2倍になることが分かりました。

ちなみに、IGF-1によって罹患するリスクが高まる癌には、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がんなどさまざまあります。

牛乳や乳製品に残留する「性ホルモン剤」への懸念

牛乳や乳製品には、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)が大量に含まれています。

第一の理由は、乳牛が「妊娠しながら搾乳されているから」です。

妊娠中の乳牛から搾乳された牛乳には、エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンなどの天然ホルモンが、妊娠していない乳牛の30倍も多く含まれています。

この天然ホルモンの「エストロゲン」は、合成されたエストロゲンよりも10万倍強力です。

牛乳や乳製品の摂取が生殖器系のがん(乳がん卵巣がん、子宮体がん前立腺がん)の原因となるのは、この「妊娠中の乳牛の乳に含まれる天然エストロゲンが体内で増加するため」と言われています。

そして第二の理由は、乳牛がさまざまな「ホルモン剤を投与されているから」です。

  • エストラジオール(女性ホルモン):黄体形成ホルモン (LH) の放出を促進し、乳牛の排卵を誘発するために使用される。
  • プロゲステロン(女性ホルモン):発情を抑制し、受胎率を改善するために使用される。
  • テストステロン(男性ホルモン):乳腺組織の成長と発達を促進し、乳量を増やすために使用される。
  • ゼラノール(エストラジオールの模倣):体重を増加させる成長促進剤として使用される。
  • 酢酸メレンゲストロール(プロゲステロンの模倣):発情周期に関与する黄体形成ホルモン (LH) と卵胞刺激ホルモン (FSH) の放出を抑え、発情を抑制するために使用される。
  • 酢酸トレンボロン(テストステロンの模倣):筋肉を発達させ、体重を増加させる成長促進剤として使用される。
  • ウシ成長ホルモン(rBGH):乳量を増加させるために使用される。

妊娠中の乳牛の乳には、すでに性ホルモンが高レベルで含まれています。そこにさらに性ホルモンが加えられるのです。

以下に、「性ホルモンの人体への影響」についての研究結果をいくつかご紹介します。

牛乳や乳製品には女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」が大量に含まれているため、男性がこれらを摂取した場合、大量の女性ホルモンが体に吸収されることで性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)分泌が抑制され、テストステロン(男性ホルモン)のレベルが低下します。

牛乳には「妊娠に関連する性ホルモンが」豊富に含まれているため、子供が牛乳を定期的に摂取すると、「思春期前の性的成熟(思春期早発症)」や「性ホルモンに関連する疾患(多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、乳がんなど)」のリスクが高くなります。

また、女児の乳房の成長が始まる年齢が早いほど、後に乳がんのリスクが高まることも判明しています。

ハーバード大学の研究者らが26年に渡り、約7万人の女性の乳製品の消費量を調査した結果、牛乳や乳製品をたくさん摂取していた女性は、閉経後に子宮内膜がんに罹るリスクが高くなることが分かりました。

これは、子宮内膜がんのリスクを増加させる「ステロイドホルモン」の供給源が、牛乳や乳製品だからです。

乳製品の摂取量の増加と生殖ホルモンの減少との間には関連性があり、乳製品をよく食べる閉経前の女性は、散発性の「無排卵」のリスクが高まる可能性があると判明しています。

このように、牛乳や乳製品を摂取すると血中のホルモン量が増加し、人体の正常なホルモン機能に影響を与えてしまうのです。

牛乳や乳製品に残留する抗生物質が招く「抗生物質耐性」

酪農業界では、乳牛の乳房炎、呼吸器疾患、子宮炎、足の感染症などの治療に、抗生物質が多用されています。

酪農で使用されている抗生物質には、以下のようなものがあります。

  • ベータラクタム系
  • マクロライド系
  • テトラサイクリン
  • スペクチノマイシン
  • フロルフェニコール

これらの抗生物質の成分はそのまま牛乳や乳製品にも残留するため、それを常食すると抗生物質耐性の発現に繋がる可能性があります。

抗生物質耐性とは、これまで治療に用いられていた抗生物質が効かなくなり、感染症の予防や治療が困難になることです。

むやみに抗生物質を体に取り入れることで、体内の細菌が抗生物質への耐性を持ってしまうのです。

抗生物質耐性は、いまや世界中で深刻な問題となっています。

牛乳に混入している「膿」

酪農業界で飼育されている乳牛は、乳をたくさん出すように選抜育種や品質改良がおこなわれています。

そしてさらに乳の出を良くするための成長ホルモン剤を打たれるので、乳牛の乳腺は異常なほど膨張しています。

前述したように、野生の母牛が子牛のために一度に出す母乳の量は最大で2リットルですが、酪農の乳牛は成長ホルモンの効果で一度の搾乳に26リットルもの乳を出します。

この雌牛の自然サイクルを完全に無視した過剰搾乳により、6頭中1頭もの乳牛が乳房炎を発症しています。これは乳牛の死亡原因にもなるほど悲惨な感染症です。

哺乳類の乳には「体細胞」が含まれています。体細胞自体は膿ではありませんが、乳房炎に感染した乳牛から搾乳された乳では、体細胞の数が爆発的に増加しています。

この激増した乳中の体細胞の90%以上が好中球、つまり「炎症性免疫細胞(膿)」になるのです。

膿が出るというのは、乳牛が乳房の感染症と闘っているということです。乳牛に尋常ではない痛みを強いて搾乳した牛乳には、乳牛が頑張っている証の「膿」が混入しているのです。

乳牛の乳房炎はあまりにも一般的であるため、酪農業界は牛乳中に含まれる膿(炎症性免疫細胞)の許容値をできる限り高くしています。国によっては膿細胞の含有量に制限すら設けられていません。

スプーン1杯の牛乳には、100万個の膿細胞が入っています。

カップ1杯の牛乳には、1億3500万~3億個の膿細胞が混入しています。

オーガニック酪農場の牛乳であっても膿は混入しています。有機酪農場は抗生物質を使えないため、乳牛の乳房炎は悪化する場合が多いからです。

牛乳や乳製品に残留する汚染物質

牛乳には、以下のような汚染物質が残留しています。

  • 農薬
  • 重金属
  • マイコトキシン(カビ毒)
  • PCB
  • ダイオキシン
  • クロルピリホス(有機リン系殺虫剤)
  • 放射性核種
  • サルモネラ菌
  • 大腸菌
  • リステリア菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • ボツリヌス菌

これらの汚染物質は、乳牛の飼料や水、飼育環境、搾乳装置、加工工場、包装材など、さまざまな段階を経て混入します。

汚染物質の混入した牛乳や乳製品の摂取は、免疫系、生殖系、中枢神経系に損傷を与えたり、食中毒を引き起こしたりする可能性があります。

まとめ:ヴィーガンの目的は、酪農という「地獄」を廃止して、雌牛と子牛に平安をもたらすこと

母牛と子牛が並んで草原を歩いている

今回は、「ヴィーガンが牛乳や乳製品を摂らない理由」について解説しました。

酪農業界の「カルシウムの供給源は牛乳」というマーケティングのおかげで、乳牛が体内でカルシウムを作っていると勘違いしている人がたくさんいます。

しかし乳牛も人間と同じ哺乳類です。体内でカルシウムを合成することはできません。乳牛も人間と同じように、毎日食べる餌(植物)からカルシウムを摂取しているのです。

カルシウムは土壌中に存在するミネラルであり、植物は根からミネラルを吸収して成長するため、カルシウムの優れた供給源となっています。

放牧飼育の乳牛は「地面に生えている牧草」を食べることでカルシウムを摂取し、酪農工場の乳牛は「ミネラルが添加された飼料」を食べることでカルシウムを摂取しています。

それが血流と乳腺に入って乳の成分になるため、牛乳にはカルシウムが含まれているのです。

それならば人間も、カルシウムの真の源である「植物」から直接カルシウムを摂取すればよいのです。わざわざ乳牛を介する必要はありません。

しかも牛乳に含まれるカルシウムの生体利用率は30~35%ですが、植物(特にアブラナ科の野菜)に含まれるカルシウムの生体利用率は50%以上と、約2倍の吸収率になっています。

牛乳や乳製品が恋しい人には、さまざまな企業から代替え食品が販売されているので、何ら困ることはありません。

【牛乳や乳製品の代替え品】

  • 豆乳・ソイミルク
  • オートミルク
  • ライスミルク
  • ココナッツミルク
  • アーモンドミルク
  • ヘンプミルク
  • カシューミルク
  • マカデミアナッツミルク
  • 植物性チーズ
  • 植物性バター
  • 植物性生クリーム
  • 豆乳ヨーグルト
  • 豆乳アイスクリーム

美味しくて、健康にも良くて、なにより雌牛と子牛を苦しませない「エシカル」なミルクやチーズを選ぶ人が増えてくれれば、酪農業界を衰退させることができます。

ヴィーガンの希望は、「一刻も早く酪農という地獄を廃止させ、雌牛と子牛に平安をもたらすこと」なのです。

双子

牛があなたのお母さんでないのなら、牛乳はあなたのものではないよ。ほかの種族の乳を奪うのはもうやめよう!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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