ヴィーガンが肉を食べない理由|動物たちの生きる権利を奪いたくないから

牛のきれいな瞳が暗闇で輝いている

畜産動物たちは殺されるために繁殖させられ、虐待されながら育ち、最後には残酷な方法で屠殺されて人びとの食卓に上ります。一年間に殺される家畜動物は、その数なんと700億匹以上です。

ヴィーガンが肉を食べない理由は、この非道な食肉産業を廃止し、動物たちの「自由に生きる権利」を取り戻したいからです。

本日はヴィーガン歴15年以上の双子が、「なぜヴィーガンは肉を食べないのか」について詳しく解説いたします。

この記事を書いた人
菜食双子
双子
  • 料理人
  • ヴィーガン歴15年以上
  • NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
目次

ヴィーガンが肉を食べない5つの理由

ステーキを切る

ヴィーガンが肉を食べない理由は、次の5つです。

  1. 動物たちにとっての地獄である「食肉産業」を廃止するため
  2. 熱帯雨林の生態系を破壊する森林伐採を止めるため
  3. 家畜の糞尿による環境汚染の拡大を止めるため
  4. 海の「デッドゾーン」から海洋動物を護るため
  5. 心臓病・糖尿病・癌・認知症のリスクを回避するため

それでは、一つずつ解説します。

理由① 動物たちにとっての地獄である「食肉産業」を廃止するため

食用の動物たちは、動ける余地もないほどの過密状態で飼育されており、コンクリートの床は排泄物だらけで、アンモニアの悪臭が充満した小屋に閉じ込められています。

農場労働者から受ける虐待に怯え、家畜を飼育しやすくするためのさまざまな「処置」に苦しみ、それらを耐えに耐えた先に待っているのが、残酷な方法での屠殺です。

まずは次の動画で、畜産農場で動物たちに施す「処置」の映像をご覧ください。

(上映時間:6分27秒)

畜産工場の動物たちが直面する虐待

次の動画は、畜産工場での飼育風景です。世界中で同様の飼育方法が用いられています。

(上映時間:3分28秒)

世界中の畜産工場で行われていること

日本も含めた世界中の畜産工場と食肉処理場で、このようにして年間700億匹以上もの家畜動物が虐待された挙句に殺されています。

ヴィーガンの最大の目的は、動物が体験しているこれらの「地獄」を終わらせることです。

下にご紹介する5本のドキュメンタリーをご覧いただくと、この「地獄」がどんなものか、さらに深くご理解いただけます。

真実を知ることは苦しいですが、ヴィーガンの「肉を食べない理由」を理解するためには避けて通れません。ぜひ頑張ってご視聴ください。

理由② 熱帯雨林の生態系を破壊する森林伐採を止めるため

「熱帯雨林の森林破壊の原因は何だと思う?」と聞かれたら、ほとんどの人が「材木を売るための違法伐採」と答えると思います。

しかし森林破壊の本当の犯人は、畜産業界による「牛の放牧です。

畜産業者は広大なアマゾンの森林を伐採したあとに火をつけて焼き畑をし、地面をならして牛を過剰に放牧しています。

その開拓した熱帯雨林で家畜の飼料作物(主に大豆)も栽培し、世界各国に輸出しています。

これらの畜産業者によるアマゾンの森林破壊が野生動物の住処を奪い、生物の多様性を失わせ、過放牧による土壌の砂漠化を招いて生態系を崩壊させているのです。

次の動画で、畜産業者によって破壊されたブラジルの熱帯雨林の様子をご覧ください。

(上映時間:1分41秒)

調査:アマゾン熱帯雨林の森林破壊

畜産が熱帯雨林の減少に関与していることがあまり知られていないため、肉食と環境破壊を結びつけることはなかなかできません。

誰でも「環境破壊は止めなければならない」と言います。しかし止めるには原因を作っている「肉食をやめる」という選択が必要なのです。

理由③ 家畜の糞尿による環境汚染の拡大を止めるため

世界中の食肉産業(酪農や鶏卵も含む)から毎日出る糞尿は、あまりに大量すぎて適切に処理しきれていません。

家畜の糞尿には、硫化水素、アンモニア、メタン、二酸化炭素などの有毒ガスや、大腸菌 O157、リステリア(グラム陽性桿菌リステリア属の細菌)、クリプトスポリジウム(胞子虫類に属する原虫)、抗生物質成長ホルモン剤などの有毒物質が含まれており、大気に放出されたり肥料として土壌に使用されることで、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性があります。

家畜の糞尿による環境汚染を以下にまとめてみました。

家畜の糞尿が分解されるときには硫化水素、メタン、アンモニア、二酸化炭素などの有毒ガスが大気中に放出される。

これを人が吸うと、目・鼻・喉への刺激、咳、頭痛、吐き気、呼吸困難[1]、せん妄(意識障害)、平衡障害、振戦(震え)、痙攣、皮膚や目の炎症[2]、臓器の損傷、昏睡、脳や心臓の損傷などが起こり、最悪の場合は死に至る[3]。

家畜の糞尿で作られた肥料に含まれる窒素やリンが、畑などの土壌から地下水に浸透して河川に流れ込むと、そこを富栄養化状態(窒素やリンが植物の成長を過剰に促進させて水中の酸素を枯渇させる)にして水中の生態系を破壊してしまう。

肉や乳製品などの動物性食品だけでなく、家畜の糞尿から作られる肥料にも大量の抗生物質と抗生物質耐性遺伝子 (ARG) が残留している。

これが今問題の、抗生物質が効かなくなる「抗生物質耐性」をさらに拡大させている。

家畜の糞尿肥料の空中散布は河川や土壌を汚染するだけでなく、糞尿に含まれる窒素がアンモニアに変換され、窒素酸化物や硫酸塩などの他の大気汚染物質と結合してスモッグを発生させる可能性がある。

光化学スモッグの主成分は窒素酸化物であり、炭化水素と窒素酸化物で汚染された大気に太陽の紫外線が作用することで生じる。

家畜の糞尿は病気を蔓延させ、パンデミックのリスクを高める可能性がある。

糞尿による病気の発生は今までにも数多くあり、人間が動物を食糧として飼育する限り、動物由来感染症によって引き起こされるパンデミックの不安が無くなることはない。

肉をたくさん消費すればするほど、大量の糞尿が排泄されます。そして糞尿が排泄されればされるほど、環境や健康への問題が増加します。

「肉を食べる」という行為は、動物、環境、人の健康にとって、何一つとしてメリットがないのです。

理由④ 海の「デッドゾーン」から海洋動物を護るため

畜産用の飼料作物栽培で使われる化学肥料には、大量の窒素とリンが含まれています。

それらが河川に流れ込み、海にまで到達して「デッドゾーン」を発生させていることは、環境問題に興味がある方なら聞いたことがあるでしょう。

デッドゾーンとは、海の富栄養化によって植物プランクトンが異常発生し、その死骸がバクテリアによって腐敗するときに酸素を大量に使うため、海水が無酸素状態になった水塊水域のこと。この水域で海洋動物は生存できない。

しかし畜産動物の糞尿に含まれる窒素やリンも、化学肥料と同じくらいデッドゾーンの拡大に影響していることはあまり知られていません。

家畜の糞尿の量は莫大なため管理も処理も適切にできておらず、雨が降ると糞尿は雨水に混ざり、下水を通って河川に流れ込むのです。

畜産動物の糞尿には大量の抗生物質のほか、ホルモン剤、農薬、殺虫剤なども残留していて、それらの化学物質もすべて河川に流れてしまっています。

汚染された川の水は海まで辿り着いてデッドゾーンを発生させ、その領域に入ってしまった海洋動物(魚、甲殻類、貝類、サンゴなど)をすべて窒息死させてしまうのです。

次の動画で、海洋生態学者ナンシー・ラバレ女史による「デッドゾーン」についての講演をご覧ください。

(上映時間:12分)*日本語字幕あり

メキシコ湾のデッドゾーン

デッドゾーンは、これからどんどん拡大する恐れがあります。

私たち人間は、陸上の動物や環境を破壊するだけでは飽き足らず、海洋の動物や環境までも破滅させようとしています。

その地球崩壊をなんとか止めるために、ヴィーガンは「肉を食べない」という選択をしているのです。

理由⑤ 心臓病・糖尿病・癌・認知症のリスクを回避するため

ディナーパーティーで男性が嬉しそうに肉を見つめてる

ヴィーガンが肉を食べないのは倫理的な理由からですが、肉食はさまざまな病気の原因となることが多くの医師によって証明されているため、健康面から見ても肉を食べることはお勧めできません。

以下に、肉食がもたらす健康リスクをまとめてみました。

  • 動物性食品に大量に含まれるコレステロールと飽和脂肪酸が、心臓病糖尿病認知症の原因になる。
  • 赤身の肉にはLカルニチンというアミノ酸が含まれており、これが腸内に入ると代謝されて「TMAO(トリメチルアミン N-オキシド)」という有機化合物が生成される。高レベルのTMAOは、アテローム性動脈硬化症や、脳卒中、心臓病などの心血管疾患のリスク増加と関連している。
  • 赤身の肉や臓物には人体では生成されない「Neu5Gc(シアル酸の一種)」が含まれており、摂取すると免疫システムが異物として認識し、抗体の産生や慢性炎症を引き起こす。これにより癌(特に結腸直腸がん)や心血管疾患のリスクが増加する。
  • エンドトキシンは肉に含まれる高濃度のグラム陰性菌の残留物で、摂取されて血流に入ると内毒素血症を引き起こして全身性炎症が生じ、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、パーキンソン病、自己免疫疾患、メタボリックシンドロームなどの疾患を招く可能性がある。
  • 動物性タンパク質を食べると、がん細胞の増殖を促進する「インスリン様成長因子IGF-1(インスリンに似た分子構造を持つホルモン)」の血中濃度が上昇するので、癌の罹患率を増加させてしまう。
  • 赤身の肉に豊富に含まれるヘム鉄は、酸化ストレスやDNA損傷を引き起こす発がん性物質の「N-ニトロソ化合物」の生成を促進し、結腸直腸がんの発症リスクを高める。
  • 食用牛に投与される大量の抗生物質は肉に残留しており、それを食べることで「抗生物質耐性(抗生物質が効かなくなる症状)」になって治療が難しくなる。
  • 食用牛に投与される成長ホルモンは肉に残留し、それが人体に入ると体のホルモンバランスが乱れて正常に働かなくなり、ホルモン依存性癌(乳がんや前立腺がん)、女性化乳房(男性の胸の肥大)、子供の発達障害などのリスクが高まる。

心臓病や糖尿病、癌や認知症、抗生物質耐性などのリスクを負ってまで、タンパク質や鉄分のために肉食をする必要はありません。

タンパク質も鉄分も、植物性食品に豊富に含まれています。

まとめ:ヴィーガンの目標は「食肉産業の衰退と廃止」

廃墟

今回は、「ヴィーガンが肉を食べない理由」について解説しました。

ほとんどのヴィーガンは、肉を食べて育った「元肉食者」です。肉の味が嫌いで肉を食べないのではありません。食肉産業の残酷な真実に気づき、その産業を支持すること(お金を払って食べること)をやめたのです。

ヴィーガンは、肉を食べないことで食肉の需要を減らし、食肉産業の衰退と廃止を望んでいます。

近年では日本でも、大豆タンパク、小麦タンパク(セイタン)、えんどう豆タンパクなどから作られた、さまざまな味や形の「代替え肉(プラントベースミート)」が販売され始めました。

また代替え肉でなくても、日本には「畑の肉」と呼ばれる大豆製品(豆腐、高野豆腐、油揚げ、厚揚げ、テンペ)があります。

口に入れて数回噛んだら飲み込んでしまう「たった一瞬の舌上の快楽」のために、毎年700億匹もの畜産動物が殺されています。

動物たちの命の重さは、その一瞬の快楽よりも軽いのでしょうか。

ヴィーガンはそうは思いません。

肉肉しいものが食べたいならば、代替え肉で充分です。

双子

双子のおすすめは「染野屋ソミート」と「ネクストミーツ」。肉のような食感の代替え肉のお惣菜だよ。試してみてね!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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