ヴィーガンが魚を食べない理由|魚は感情豊かな「動物」だから

釣り上げられた魚が氷に沈められて苦しんでいる

魚には神経伝達物質と受容体があるため、痛みや苦しみを感じることができます。魚に声帯はありませんが、音や匂い、電気パルスや動きなどでお互いにコミュニケーションを取り合っています。鏡で自分の姿を認識することも、人間の顔を覚えることもできます。

魚たちは素晴らしい知覚、学習、記憶の能力を持つ「動物なのです。

その「感情豊かな動物」である魚たちは、商業漁業という無差別大量虐殺によって、年間2.7兆匹もが捕獲され殺されています。漁網に巻き込まれて混獲される海洋動物の数は、毎年65万頭以上です。

ヴィーガンが魚を食べない理由は、これらの悲劇を生む商業漁業を一日も早く廃止したいからです。

本日はヴィーガン歴15年以上の双子が、「なぜヴィーガンは魚を食べないのか」について詳しく解説いたします。

この記事を書いた人
菜食双子
双子
  • 料理人
  • ヴィーガン歴15年以上
  • NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
目次

ヴィーガンが魚を食べない5つの理由

日本の魚屋の風景

ヴィーガンが魚を食べない理由は、次の5つです。

  1. 魚は感情豊かな「動物」だから
  2. 魚の「大量虐殺」である漁業を廃止するため
  3. 混獲(Baycatch)を根絶するため
  4. 魚を苦しめる水産養殖を廃止するため
  5. 魚介に残留する有毒物質から体を護るため

それでは、一つずつ解説します。

理由① 魚は感情豊かな「動物」だから

水中でほほ笑む魚

魚には痛みを理解して反応する神経系があり、人間と同様の神経伝達物質と受容体を持っています。つまり魚は人間と同じように痛みも苦しみも感じる「動物」なのです。

魚は脳と神経系が完全に発達しているため、人間と同じく恐怖を感じることもできます。

魚だけではありません。甲殻類(カニやロブスター)や、頭足類(タコやイカ)も、痛みや苦しみを感じることが分かっています。

さらに言うと、魚類にも甲殻類にも頭足類にも、素晴らしい知覚、学習、記憶の能力があります。

彼らに声帯はありませんが、音、匂い、色、電気パルス、発光、動きなどを使い、お互いに連絡を取り合っています。歯をこすり合わせたり、浮袋を動かしたり、体を振動させたりして音を出し、コミュニケーションを取る魚たちもいます。

魚は人間よりも多くの色彩を見ることができ、鏡に映った自分の姿に気づくこともでき、人間の顔を覚えることもできます。

魚たちは驚くほど感情豊かな「動物」です。そしてヴィーガンは動物を食べません。よってヴィーガンは魚を食べないのです。

理由② 魚の「大量虐殺」である漁業を廃止するため

商業漁業

商業漁業の漁網にかかった魚が水中から急激に引き上げられると、減圧が発生します。その衝撃で魚の目は飛び出し、内臓は破裂し、口から胃袋が押し出されます。

陸に上げられた魚のほとんどは、そのまま放置されて窒息死します。一緒に釣り上げられた魚の重みに潰されて圧死する場合もあります。

鰓(えら)を切られて失血死することも、二酸化炭素で気絶させられたまま窒息死することも、氷の中に埋められてゆっくりと窒息死することもあります。

人道的な屠殺と称した「パーカッシブ・スタンニング(魚の頭に激しい打撃を与えて気絶させ、死ぬまで無意識のままにする方法)」や、「電気スタンニング(電流を流して瞬時に気絶させて、死ぬまで放置する方法)」で殺されることもあります。

魚の顔は感情を表すことができず声帯もないので、どれほど痛くてどれほど苦しいかを表現する術がありません。そのため人びとは、魚を「生物」というよりも野菜や果物と同類の「静物」として捉えています。

ほとんどの人は魚を殺すことに何のためらいも感じず、年間2.7兆匹もの魚介を、漁業という名の「大量虐殺」によって殺しているのです。

次の動画に映された、魚の苦しみがあなたには聞こえますか?

(上映時間:30秒)

誰にも届かない魚たちの悲鳴

ヴィーガンは「魚を食べない」ことで需要を減少させ、商業漁業の衰退を招いて「魚の大量虐殺」を阻止しようとしています。

理由③ 混獲(Baycatch)を根絶するため

トロール船

商業漁業のトロール船では、トロール網(底引き網の一種)を使用して漁業を行います。

トロール網の大きさや形は、狙う獲物によって大きく異なりますが、平均して長さ70~110メートル、メッシュのサイズは1.5~2cm、網の開口部は12~18メートル、高さは2.5~3メートルです。

このトロール網を使って、時速2~4kmで海底を引きずりながら乱獲するのですが、このときにクジラ、イルカ、ウミガメ、サメ、アザラシ、海鳥などの海洋動物が一緒に網にかかってしまうのです。

毎年少なくとも65万頭以上(3,800万トン)の海洋動物が混獲されており、これは世界中の漁獲量の40%に相当します。しかしこの統計には大型の海洋動物に関する情報は含まれていないため、実際の混獲量はさらに多いと言われています。

魚と一緒に網にかかった海洋動物は、船に引き上げられた時点で減圧による内臓破裂でほとんどが死んでいるか、または瀕死の状態で、そのまま海に投げ捨てられます。

年間2.7兆匹もの魚介類を捕獲し、凄まじい数の海洋動物を混獲しているにも拘らず、環境団体は未だに「持続可能な漁業」を提唱しています。これは信じがたい発言です。

次の動画で、混獲(Baycatch)の様子をご覧ください。

(上映時間:3分30秒)

隠された恥辱「混獲」

太平洋の海洋ゴミベルトの80%はプラスチックごみで、その内の46%は商業漁業が捨てていった漁網です。海洋動物は混獲で殺される以外にも、これらの漁網に絡まって命を落としています。

ヴィーガンが増えることで魚を食べる人が減り、魚の需要が減退すれば漁に出る船も減少するので、捨てられる漁網の問題も解決に向かいます。

つまりヴィーガンは「魚を食べない」ことで、商業漁業がもたらす混獲の問題と漁網放棄の問題を根絶しようとしているのです。

理由④ 魚を苦しめる「水産養殖」を廃止するため

ひしめき合う養殖場の魚たち

世界の水産養殖場では、毎年8,800万トンという莫大な量の魚介が生産されています。

水産養殖には、海の中に網でいけすを作りその中で魚介類を育てる「海面養殖」と、陸の上に水槽を作ってその中で魚介類を育てる「陸上養殖」の2種類があります。

海面養殖の魚介類も、陸上養殖の魚介類も、遺伝子組み換えで品種改良されており、少なくとも世界中で35種類以上もの魚介が遺伝子操作されています。

養殖場の魚介は、自由に泳いだり動いたりする本能を制御され、狭く窮屈な水槽やいけすに大勢の仲間たちと一緒に詰め込まれています。

混み合った水槽やいけすの中は水流が弱まって水が淀み、酸素レベルも低く、水温も高く、エサの食べ残しや排泄物、病死した魚介が底に蓄積しており、この環境が病気の発生や寄生虫の繁殖に非常に適しているのです。

そのため、ひとたび感染症や寄生虫が発生すると瞬く間にすべての魚介に感染してしまい、それを駆除するために、魚介たちは殺虫剤(デルタメトリン、アザメチホス)、殺菌剤(過酸化水素)、ホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)を使って洗浄されます。

野生の魚介の消化管にも感染症を引き起こすバクテリアは住んでいますが、害を及ぼすことはありません。それが深刻な感染症の原因となるのは、魚介が強いストレス(過密状態での飼育、自由の制限、安価な原材料のエサなど)を受け、病気に対する抵抗力が低下しているときです。

次の動画で、養殖場の実態をお確かめください。

(上映時間:3分48秒)*自動翻訳機能あり

養殖場のショッキングな事実

養殖場の問題として一番知られているのが、海シラミへの感染です。

海シラミは魚の皮膚、粘液、血液を食べて生きています。海シラミが好むのが魚の頭部、背中、肛門周辺のため、感染している魚たちの体はそれらの部分が欠損しています。

鮭の養殖場では、海シラミを駆除するために「スライス(エマメクチン安息香酸塩)」という農薬が使用されています。

野生の鮭に、この海シラミが寄生することはほとんどありません。野生の鮭は川で生まれ海へ出て、再び故郷の川へ戻ってきて産卵しますが、海シラミは淡水では生きられないので川に戻るときに鮭から離れるのです。

海シラミは過密状態で飼育される「養殖場特有の問題」となっています。

次の動画で、海シラミに体を食われた鮭の養殖場の実態をご覧ください。

(上映時間:2分49秒)

スコットランドの養殖場で苦しむ鮭たち

海面養殖の魚が網から逃げ出し、野生魚と交配して繁殖すると、野生魚の個体群へ非在来遺伝子を導入してしまう可能性もあります。こうして野生魚の個体群の遺伝子構成が弱体化し、海洋の生態系は破壊されていくのです。

ヴィーガンは「魚を食べない」ことで、魚介の需要を減らして魚を苦しめる養殖場を廃止に追い込み、海洋の生態系を(完全に元には戻らなくても)回復させようとしています。

理由⑤ 魚介に残留する有毒物質から体を護るため

汚染化学物質のポスター

ヴィーガンが魚を食べないのは倫理的な理由からですが、健康面から見ても魚を食べることはお勧めできません。

現在の海が、有毒な化学物質、農薬、殺虫剤、除草剤、プラスチックごみ、下水、生活排水、ダイオキシン、重油などにより汚染されていることは、今や周知の事実となっています。

汚染された海に暮らす魚や海洋動物たちは、これらの有害物質を体に取り込む生活を余儀なくされており、そのような魚介を食べるということは、わざわざ「有害物質を体に入れる」ようなものです。

中でも特に問題となっているのが、次の3つです。

  1. マイクロプラスチック
  2. 水銀
  3. 化学汚染物質

それでは、一つずつ解説します。

マイクロプラスチック

マイクロプラスチックとは「5ミリ以下の小さなプラスチック破片」のことで、海水に混入しているマイクロプラスチックは、さまざまな種類のプラスチックごみからできています。

  • 一次マイクロプラスチック:スクラブ洗顔剤や歯磨き粉、化粧品や洗濯洗剤などに入っている「マイクロビーズ」のこと。
  • 二次マイクロプラスチック:海に流れてきたプラスチックごみが、太陽の紫外線や波にもまれて劣化し、分解されて小さな破片になったもの。

*二次マイクロプラスチックは、ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン (PP)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリエチレンテレフタレート (PET) などのプラスチックからできています。

マイクロプラスチックをエサと間違えて食べてしまった魚は、プラスチックの破片が消化器官に詰まって死ぬこともあります。

貝類や甲殻類は魚よりもマイクロプラスチックの影響を受けやすく、身には多くのプラスチック破片が含まれています。貝類や甲殻類をよく食べる人は、年間に1万個以上のマイクロプラスチックを食べているそうです。

マイクロプラスチックは海に混入している重金属、ポリ塩化ビフェニル (PCB)、農薬などの化学物質を吸収する性質を持っているため、マイクロプラスチック入りの魚介を長期にわたって食べ続けると、内分泌かく乱、代謝障害、神経毒性、癌などの深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。

水銀・メチル水銀

海には6~8万トンの水銀が含まれており、ほとんどが水深1,000メートルより浅い海域に存在しています。海中の水銀濃度が最も高いのは、北極海と北大西洋です。

海洋の最大の水銀源は、鉱業、石炭火力発電所、セメント工場、廃棄物焼却炉、鉄鋼生産、塩素アルカリ産業(塩素、水酸化ナトリウム、水素、塩酸、次亜塩素酸ナトリウムなどの化学物質を製造する)などから大気に放出された水銀のガスが、雨、雪、霧などによって降下し、海面に沈着する「大気降下・大気沈着」です。

中国やインドでは石炭の使用が拡大しているので、世界の大気への水銀排出量は増加し続けています。そのため水銀の大気降下・大気沈着は、産業革命以降の3倍になってしまっています。

海に沈着した水銀は、微生物によって非常に有毒なアルキル水銀(有機メチル水銀)に変化します。

メチル水銀を含んだ微生物を小魚が食べ、その小魚を中型の魚が食べ、それを大型の魚が食べることで、メチル水銀はどんどん蓄積されていきます。

人間の水銀中毒の主な(唯一と言っても良い)原因は、水銀に汚染された魚介類を食べることです。

長期間に渡ってメチル水銀に汚染された魚を食べ続けていると、皮質盲、立体視障害、書画感覚障害、手の協調運動障害、運動失調、舞踏病アテトーゼ、構音障害、注意欠陥障害、成長・発育障害、精神機能障害、肺機能障害、難聴、失明、小頭症などを引き起こす可能性があります。

胎児や乳児は特にメチル水銀の影響を受けやすく、中枢神経系(脳と脊髄)の損傷を招きます。

化学汚染物質

海水には、以下のリストにあるような化学汚染物質が数多く含まれていて、魚介類の体にもそれらの汚染物質が蓄積されています。

  • 砒素
  • カドミウム
  • セレン
  • ポリ塩化ビフェニル (PCB)
  • ダイオキシン
  • 多環芳香族炭化水素 (PAH)
  • DDT(殺虫剤)
  • カルボン酸除草剤
  • スルホンアミド(抗生物質)
  • ニトロフラン(抗生物質)

これらの化学汚染物質は、癌、発達障害、生殖障害、神経障害、免疫障害などのリスクを増加させます。

長期に渡ってこれらの化学汚染物質が蓄積した魚介を摂取すると、肝臓、腎臓、神経系、血液、心血管系、免疫系、生殖器系に損傷を与える可能性があります。

Occurrence of Chemical Contaminants in Seafood and Variability of Contaminant Levels(水産物における化学汚染物質の発生と汚染レベルの変動):こちらはアメリカ国立医学図書館による、海洋動物と化学汚染物質について詳しく解説された、読み応えのある記事(英文)です。海洋汚染問題にご興味のある方は、ぜひご一読ください。

まとめ:ヴィーガンは、魚や海洋動物たちに平和な海を返したい

静かで平和な海

今回は、「ヴィーガンが魚を食べない理由」について解説しました。

ほかの動物と姿形は違うけれど、魚も、タコも、イカも、エビも、カニも、みんな動物です。動物だからこそ、人間と同じように痛みも苦しみも感じるのです。

魚介を苦しめて殺さなくても、魚介の代替え品はネット通販でたくさん販売されています。

ヴィーガン海鮮の一例

  • 刺身(マグロ、イカ、サーモン)
  • 練り物(蒲鉾、ちくわ、すり身)
  • カニカマ
  • 小エビ・むきエビ
  • イカリング
  • ツナ缶
  • フライ(牡蠣、海老、サーモン)
  • 白身魚の切り身
  • イクラ(みずたまご)

魚介をやめて海鮮の代替え品をたくさん利用することで、商業漁業が衰退し、魚や海洋動物たちを漁網から解放してあげられます。

ヴィーガンの願いは、魚や海洋動物たちに「一日でも早く静かで平和な海を返すこと」なのです。

双子

商業漁業の闇に興味がある方は「SEASPIRACY(Netflix)」を観てみてね!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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