ヴィーガンとして生きるのがつらい…心が苦しい原因「ヴィストピア」とその乗り越え方

若い女性が上を見つめて泣いている

この記事にたどり着いてくださったあなたは、動物搾取が当たり前の社会でヴィーガンとして生きながら、言いようのない生きづらさを感じているのではないかと思います。

動物を食べることに対する価値観も周りと合わないため、家族や友人との関係もギクシャクしてしまい、疎外感や孤立感を抱いているかもしれません。

どこを見渡しても「動物搾取」の産物である食品や衣料品、コスメやエンターテイメントが溢れ返り、それに関わった動物たちの苦しみを想像するだけで、無力感と悲しみと怒りで発狂しそうになるでしょう。

その心理状態を、ヴィーガン特有のうつ「ヴィストピア」と呼びます。

ヴィストピアは一般的なうつ病とは異なり、「非ヴィーガン社会で生きるヴィーガン」にのみ発症する独自の精神的苦悩です。

双子はヴィーガンになってから15年以上、この「ヴィストピア」と闘っています。

昔は「ヴィーガンのうつ」について何の情報もなく、社会への絶望感と無力感から希死念慮が生じ、体調を崩すほどでした。しかし、2017年に「ヴィストピア」という新たな概念が提唱され、その対処法を取り入れてからは、つらい気持ちを何とかしのげるようになっています。

そこで今回は、ヴィーガンの『生きづらさ』の正体「ヴィストピア」をテーマに、概念から対処法までを分かりやすく解説します。

大丈夫です。あなたは一人ではありません。

双子と一緒に、ヴィーガンのうつ「ヴィストピア」を乗り越えていきましょう。

この記事を書いた人
菜食双子
双子
  • 料理人
  • ヴィーガン歴15年以上
  • NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
目次

ヴィストピアの名付け親、心理学者クレア・マン博士

(上映時間:2分39秒)

ヴィストピア」の解説:心理学者クレア・マン博士

2018年、オーストラリアを拠点とする心理学者であり、実存主義心理療法士でもあるクレア・マン博士(Dr. Clare Mann)は、書籍「Vystopia|The Anguish of Being Vegan in a Non-Vegan World, by Clare Mann(ヴィストピア|非ヴィーガン世界でヴィーガンであることの苦悩)」を出版し、全世界に「ヴィストピア」という疾患概念を広めました。

ヴィストピア(Vystopia)という用語は、「ヴィーガン(Vegan)」と暗黒郷を意味する「ディストピア(Dystopia)」を組み合わせた造語で、2017年にマン博士が作ったものです。

マン博士の活動の中心は、ヴィーガンが非ヴィーガン世界で生き抜くためのツールを提供することです。動物解放のために立ち上がったヴィーガンが、ヴィストピアによる苦悩を乗り越え、より力強い「動物の代弁者」になれるよう支援しています。

ヴィストピアとは、動物虐待の現実を知ったヴィーガンが抱える精神的苦痛

ソファに座り落ち込む男

ヴィストピアとは、社会の仕組みの中で常態化している「動物虐待の現実」を知ってしまったヴィーガンが経験する、深刻な精神的苦痛のことです。

クレア・マン博士は、ヴィストピアを次のように定義しています。

The Existential crisis experienced by vegans, arising out of an awareness of the trance-like collusion with a dystopian world and the awareness of the greed, ubiquitous animal exploitation, and speciesism in a modern dystopia.

ディストピアのような世界に自らも無自覚に加担していたことに気づき、現代社会に蔓延する強欲や動物搾取、種差別の現実を直視したときに、ヴィーガンが直面する「自分の存在意義を根底から揺さぶられる」ような実存的危機

Clare Mann, 『Suffer』

この実存的危機とは、社会全体の仕組みが「動物の犠牲」や「人間中心の価値観(種差別)」の上に成立している、ということに気づいたヴィーガンに生じる「自己認識の崩壊」を指しています。

ヴィーガンとしての理想(倫理的一貫性)と、社会に深く根付く現実(構造的搾取)のギャップを認識したとき、「個人の努力には限界があり、自分一人では世界を変えられない」という無力感と絶望に襲われます。

その際、「自分は何のために生きているのか」「自分が存在する意味はあるのか」といった根源的な問いが生まれ、結果として「自己認識(価値観や人生観)」が根底から崩壊していくのです。

ヴィストピアの苦悩が深まる3つのステップ

ステップを降りているピクトグラム

ヴィストピアは単一の感情ではなく、「知ることの重荷」「他者の無関心による苦悩」「社会全体への不信」の3段階を経て徐々に深まっていく現象です。

各ステップごとに解説していきます。

ステップ1:知ることの重荷

先ず、ヴィストピアは「動物を単なる商品や資源として扱うシステム(工場式畜産、酪農工場、鶏卵工場、養殖場、食肉処理場、動物実験施設、革産業、羽毛産業など)」の実態を知ることから始まります。

社会に深く組み込まれ、隠蔽され、合法化された「動物への残酷な扱い」を知ってしまった衝撃により、深い精神的ショックと心理的苦痛を経験します。

ステップ2:他者の無関心による苦悩

次に、この「動物虐待の真実」を家族や友人も教えたくなります。そして「彼らならきっと共感して、一緒にヴィーガンになってくれる」と期待します。

しかし実際に返ってくるのは、無関心、抵抗、批判、拒絶、あるいは「今さら何しても社会なんて変わらないよ」という諦めの言葉。

大切な人にわかってもらえない悲しさと、優しいはずの家族や友人が動物たちの苦しみから目を背け、残虐行為に加担し続ける姿に、無力感と深い孤独を覚えます。

ステップ3:社会システム全体への不信

最終的に、「動物搾取についてこれほどのことを知らなかったのなら、他にも知らないことがあるのではないか?」という疑問に至ります。

これにより、政府、医療、製薬会社、教育機関、メディア、宗教など、社会のありとあらゆるものに対して不信感を抱き始めるのです。

「他にどんなことを隠しているのだろう?」と調べていくうちに、社会システム全体における隠蔽や欺瞞に気づいてしまい、周りからは「陰謀論者」として扱われることで、さらなる孤立と苦悩を経験します。


ヴィストピアは、以上のような段階的プロセスを経て進行していくのです。

ヴィストピアになりやすい人の4つの特徴

色とりどりの4つの小屋

ヴィストピアは、エシカルヴィーガンならば誰にでも起こりうるものですが、特に以下の傾向がある人は、ヴィストピアを発症しやすいかもしれません。

  1. 共感性が高い
  2. 神経症傾向が強い(不安を感じやすい)
  3. 理想主義が強い
  4. 道徳心が強い

一つずつ解説していきますので、あなたにその特徴があるかどうかチェックして、セルフケアの方法を確認しておきましょう。

特徴① 共感性が高い

共感性が高い人は動物たちの感情を強く感じ取るため、精神的に疲弊しやすい傾向があります。感情的境界もあいまいなので、動物たちの苦しみをまるで自分自身のことのように体験してしまい、こうした「共感疲労」が続くことでヴィストピアを発症してしまいます。

セルフケア方法:動物たちの感情と自分の感情の境界線をしっかり保つことが大切です。難しいかもしれませんが「自分は自分、動物は動物」と意識し、必要以上に感情に巻き込まれないように心がけましょう。

特徴② 神経症傾向が強い

神経症傾向が強い人は不安や心配、恐怖や怒りなどのネガティブな感情を感じやすく、物事を悲観的に捉えがちで、ストレスへの耐性が低い傾向にあります。そのため、動物虐待などのニュースを見ただけでも激しい気分の落ち込みや異常な恐怖に襲われてしまい、ヴィストピアを発症します。

セルフケア方法:後述の「呼吸瞑想法」や「感情解放テクニック」などを取り入れて感情の扱い方を学び、動物搾取に対する心配や怒りを和らげて、心を落ち着かせましょう。

特徴③ 理想主義が強い

理想主義が強い人は「完璧」を追い求めるあまり、「地球人全員ヴィーガンにする」などといった途方もない理想を目指す傾向があります。妥協を嫌い人にも完璧を求めるため人間関係の摩擦を生み、理想と現実のギャップに心が対応できずに挫折感やストレスを抱えてしまうと、ヴィストピアを発症します。

セルフケア方法:非ヴィーガン社会に対する「自分の理想基準」が一般的な基準とどれほど離れているか、客観的に見直す習慣を持ちましょう。感情的な視野狭窄を避け、多面的な視点を取り入れる努力をすれば、過剰な「理想への固執」を和らげることができます。

特徴④ 道徳心が強い

道徳心が強い人は良心や倫理観に基づいて行動し、ヴィーガンの道徳基準を人にも押し付けてしまうので、周囲との衝突が起きやすい傾向があります。完璧主義で責任感もありすぎるため自己犠牲になりやすく、燃え尽き症候群のような精神的疲弊を引き起こして、ヴィストピアを発症します。

セルフケア方法:動物搾取の現状を調べて自分ができることとできないことを区別し、過度な自己責任感や罪悪感を減らしましょう。非ヴィーガン社会を批判しすぎずに、対話や質問を通じて人々に理解してもらうようにすると、摩擦や対立を避けることができます。

ヴィストピアの症状と発症原因

動物搾取をやめろのプラカード

ヴィストピアは病理的な精神疾患ではなく、動物に対する残虐な行為を目にしたとき、道徳心を持つ人間ならば誰もが抱く「正常で健全な心の反応」です。

ヴィストピアの症状にはうつ病と似ている部分もありますが、以下の表にある「発症原因(症状が始まるきっかけや理由)」をご覧いただくと、精神疾患との違いがより明確になります。

症状発症原因
興味や喜びの喪失動物たちはこの瞬間も苦しんでいるのに、自分だけ楽しんだり幸せを感じるわけにはいかないと思う
日常生活の困難動物を食べている人や動物性の食品が並んでいるのを見ると強いストレスを感じるため、レストランでの外食やスーパーでの買い物ができなくなる
社会への激しい怒り動物搾取システムを変えようとしない社会や動物の苦しみに無関心な人々が、動物の権利や尊厳を軽視し続けていることに対する強い不満や憤りがある
無力感・絶望感自分一人が頑張っても巨大な社会システムを変えることはできないと痛感し、「何をやっても無駄だ」という感覚に襲われる
罪悪感過去に動物を食べていたことへの深い後悔と、動物を救うことも社会を変えることもできない自分への自責の念に苛まれる
深い悲しみ・悲嘆動物たちが置かれている状況を思うと心が痛み、涙が止まらなくなる
希死念慮・自殺願望動物搾取をする人間から動物たちを救うことができないのならば、自分には生きている価値はないと思う
孤独感・孤立感家族や友人などの身近な人にすら理解されず、距離を感じて関係も悪化し、世界で自分だけが取り残されたような感覚に陥る
人間嫌い(ミサンスロピー)人間の残酷さに失望し、嫌悪感や不信感を抱き、非ヴィーガンの人たちとの会話や交流を避けるようになる
燃え尽き症候群「もっと動物のために行動しなくては」と自分を追い詰め、アクティヴィズムや情報発信に情熱を注いだ結果、心身ともに疲れ果ててしまう
共感疲労辛い状況にある動物たちの苦しみに過度に共感し過ぎることで、自分自身の心が疲れ、感情やエネルギーが消耗する
PTSD(心的外傷後ストレス障害)動物虐待や屠殺の現場を直接、または映像で見たことによる強いショックや恐怖を経験し、トラウマの記憶がフラッシュバックや悪夢として繰り返し蘇る
持続的な気分の落ち込みSNSやニュースで動物に関する悲しい情報を見るたびに心が重くなり、動物虐待の内容や映像が頭から離れず、ずっと憂鬱な気分が続く

ヴィストピアが「正常で健全な反応」だとしても、日常生活に支障が出ている場合はためらわずに専門家の助けを借りてください。

心がつらいときに専門家を頼るのは恥ずかしいことではなく、動物のために活動を続けるには、まずは自分の心と体が健康でなければなりません。

ただ、医師によってはヴィストピアの症状を「摂食障害(動物を食べている人々の周りで食事ができないから)」や「自傷行為(動物虐待の生々しい映像を何度も繰り返し見るから)」などと誤診し、不要な薬物治療を行うことがあります。精神科や心療内科を受診する際は、医師がヴィストピアについて知っているかどうか確認することをおすすめします。

ヴィストピアを乗り越えるための7つの対処法

山登りをしている男性

ヴィーガンは、生涯を通じて「ヴィストピア」という精神的な苦痛と向き合うことになります。だからこそ、その痛みを上手に和らげながら、自分らしく生きる方法を身につけなければなりません。

ヴィストピアの対処法には、自分を癒すための「内面的な取り組み」と、非ビーガン社会でのやり取りを学ぶ「外面的な取り組み」という2つのアプローチがあります。これらをバランスよく実践することで、ヴィストピアの苦しみを「社会を改革する力」へと変えていくことができるのです。

今回はその2つのアプローチの中から、すぐにでも実践できる具体的な対処法を7つご紹介します。ぜひあなたの毎日に取り入れてみてください。

それでは、一つずつ解説していきます。

対処法① 感情解放テクニック

感情解放テクニック(Emotional Freedom Techniques)は、東洋医学の経絡(ツボ)理論と西洋の認知行動療法を組み合わせた、心理的セルフケア法です。

「タッピング療法」とも呼ばれ、体の特定の部位を指で軽くトントンとタップしながら、自分の感じていることを言葉に出していきます。

これにより、ネガティブな感情や思考パターン、深く根付いたトラウマなどが身体から解放され、新しい感じ方や考え方ができるようになり、落ち着きを取り戻せます。

【感情解放テクニックのやり方】

  1. ネガティブな感情の特定:静かに座って深呼吸をしたら、今自分が感じている最も強いネガティブな感情(例:恐怖、不安、悲しみ、怒り、人間への憎悪)を特定します。
  2. セットアップ文(受容の宣言):手の平の側面(空手チョップで使うところ)を軽くタップしながら、セットアップ文を3回声に出して唱えます。(例:「たとえ(特定したネガティブ感情)を感じていても、私はありのままの自分を愛し、尊重し、受け入れます」)
  3. ツボをタップしながら感情を表現:体の9つのポイントを①から順に10~15回トントンと軽くタップしながら、先ほどのセットアップ文を声に出して繰り返します。
    タップするときは人差し指1本か人差し指と中指の2本を使います。タップする場所は片側だけでも両側でも効果は変わりません。
    ①眉頭
    ②目尻とこめかみの間
    ③目の下
    ④鼻の下
    ⑤顎
    ⑥鎖骨の下
    ⑦脇の下
    ⑧手首の内側
    ⑨頭頂部
    ネガティブな感情がある程度解放され、落ち着きを感じ始めるまで、この動作を繰り返してください。
  4. アンカリング(望む感情への移行):今自分が感じたいポジティブな感情(例:喜び、感謝、安らぎ、希望、誇り、楽しさ、平和、愛)を3つ選択します。そして「私は(選択した3つのポジティブ感情)を感じることを選びます」と口に出して唱えながら、再び9つのツボを順にタッピングしていきます。
    これをやることで、ポジティブな感情を身体に「アンカー(特定の外部刺激と特定の心理状態を結び付ける)」し、意識的にその状態に移行できるようにします。

*感情解放テクニックの詳しいやり方は、こちらの動画でご確認いただけます。

対処法② 呼吸瞑想法

呼吸瞑想法(Breath Meditation)は、ゆっくりと呼吸しながらリラックスした状態に入り、自分が創造したい「ヴィーガン世界」を強くイメージして視覚化することで、幸福感をもたらすセロトニンやオキシトシンの分泌を促進して、不安やストレスを軽減する方法です。

怒りや悲しみなどの否定的な思考を繰り返していると、無意識にネガティブな反応が出てしまう状態(ハードワイヤリング)を引き起こし、感情のコントロールが難しくなってしまいます。これを断ち切るために、呼吸瞑想法を用います。

【呼吸瞑想のやり方】

  1. 姿勢を整える:椅子に座っても、床に座ってもOK。猫背で胸が圧迫されると呼吸が浅くなるため、軽く背筋を伸ばすのが基本です。肩や喉に余計な力を入れず、リラックスして座ります。
  2. 目を閉じる:目は軽く閉じます。
  3. 鼻からゆっくり息を吸う:肺が満たされる感じを意識しながら、4秒かけて深く息を吸い込みます。
  4. 口をすぼめて息を吐く:口を軽くすぼめ、音を軽く立てながらゆっくりと4秒かけて吐き出します。怒りで身体が熱くなっているときは、吐く息を長めにします。
  5. 呼吸の感覚を注意深く観察する:息の出入りや肺の広がり、胸やお腹の動きを感じ取りながら呼吸に集中します。呼吸を「コントロール」するというより「観察する」意識が大切です。
  6. イメージを視覚化する:瞑想状態に入ったら、自分が望む「ヴィーガン世界」を頭の中で鮮明にイメージします。その未来が実現したときに感じる幸福な状態(喜び、安心感、豊かさなど)を今この瞬間の自分に体験させ、体に深く刻み込みます。
  7. 瞑想中に慰めの言葉を唱える:呼吸法をやりながら「大丈夫。私は安全。私はできる」といった、自分を慰めるような言葉を心の中で唱えると、心の平静さがさらに強化されます。
  8. この呼吸法を数分~10分程度繰り返す:短時間でも効果はありますが、10分程度続けると心身がかなり落ち着きます。

*呼吸が乱れてきたら、無理をせず自然に戻してください。

呼吸に意識を集中することで自動的に思考が落ち着き、怒りと悲しみで我を失った自分を「今ここ」に戻してくれます。短時間(2~5分)行っただけでも効果を感じやすく、ヴィーガン特有の「動物の苦しみを想像して精神が混乱する」といった状況に特に役立ちます。

この呼吸瞑想法は、前述の「感情解放テクニック」と合わせて使うと効果的です。感情解放テクニックで感情を解放したあとに呼吸瞑想をすることで、さらに心が落ち着きます。

対処法③ デジタルデトックス

「今、動物たちに何が起こっているのか?」を知ることはとても重要です。その真実を知らずにヴィーガンになることはできません。

しかしだからと言って、屠殺場や動物実験の映像、ヴィーガンドキュメンタリーや動物虐待のニュースなどで動物の苦しみを絶えず見続けることは、心を疲弊させて二次的なトラウマ(代理受傷:他者のトラウマ体験を目撃することで、自分もトラウマ症状に似た心理的苦痛を経験する現象)を引き起こしてしまう可能性があります。

もし心が受け止めきれなくなったら、一時的にそれらの情報から離れてください。

あなたは「動物の苦しみから逃げた」のではありません。あなたの心が健康でなければ、動物たちを救うために闘い続けることはできないからです。これはあなたの心を守るための戦略的休息ですが、同時に動物たちを護る行動でもあるのです。

とにかく「何も見ない、何も聞かない」こと。情報を遮断して、感情解放テクニックと呼吸瞑想法を繰り返し、自分の理性を取り戻す努力をしてください。

この対処法は、傷口に絆創膏を貼るくらいの効果しかありませんが、怒りと悲しみで狂いそうになっているときには即効性があります。

対処法④ バランスの取れたヴィーガン食

「ヴィーガンになるとうつ病になりやすい」という噂がありますが、これには神経の働きに欠かせない栄養素の不足が関係しています。

実際、必要な栄養素が足りないと脳や神経の機能が低下し、うつ病などの精神的な不調を引き起こすリスクがあるのです。

ただし、栄養素不足によるうつ病はヴィストピアの根本原因とは違います。ですが、ヴィーガンの健康を守るうえで「必須栄養素の知識」は重要ですので、栄養素不足を予防するためにも理解しておくことをおすすめします。

以下に不足するとうつ病リスクを上昇させる栄養素と、それらの栄養素が含まれる食材をご紹介します。

栄養素含まれる食材
ビタミンB1玄米、オートミール、全粒粉パン、ライ麦パン、十割蕎麦、大豆、枝豆、そら豆、小豆、落花生、グリーンピース、ひよこ豆、ごま、カシューナッツ、かぼちゃの種、銀杏
ビタミンB2ホウレン草、ブロッコリー、モロヘイヤ、ニラ、小松菜、唐辛子、干しシイタケ、マッシュルーム、アーモンド、納豆、焼きのり、干しひじき
ビタミンB6にんにく、ドライトマト、赤ピーマン、モロヘイヤ、ブロッコリー、さつま芋、じゃが芋、切り干し大根、玄米、バナナ、アボカド、きな粉、落花生、ごま、ピスタチオ、焼きのり
ビタミンB12サプリメント*必須
葉酸枝豆、芽キャベツ、菜の花、アスパラガス、ブロッコリー、オクラ、ホウレン草、モロヘイヤ、干しシイタケ、舞茸、黒豆、レンズ豆、ひよこ豆、小豆、納豆、ごま、クルミ、ひまわりの種、​アボカド
ビタミンDサプリメント*推奨
鉄分青のり、岩のり、焼きのり、乾燥きくらげ、​大豆製品(豆腐、高野豆腐、納豆、豆乳、​厚揚げ)、枝豆、レンズ豆、ひよこ豆、パセリ、大根の葉、小松菜、ホウレン草、​純ココア、かぼちゃの種
亜鉛ひよこ豆、黒豆、大豆、レンズ豆、えんどう豆、カシューナッツ、アーモンド、ごま、落花生、松の実、かぼちゃの種、小麦胚芽、焼きのり、切り干し大根、サプリメント*おすすめ
マグネシウムキヌア、きび、十割そば、全粒粉パン、玄米、乾燥きくらげ、干しシイタケ、かぼちゃの種、チアシード、アーモンド、カシューナッツ、クルミ、大豆製品(豆腐、納豆、豆乳、きな粉)、ホウレン草、小松菜、焼きのり
トリプトファン大豆製品(豆腐、納豆、高野豆腐、豆乳、きな粉、大豆ミート)、カシューナッツ、アーモンド、ごま、ひまわりの種、かぼちゃの種
メチオニンブラジルナッツ、ごま、かぼちゃの種、ひまわりの種、カシューナッツ、アーモンド、茹で大豆、納豆、きな粉
チロシン大豆タンパク(大豆ミート)、納豆、落花生、かぼちゃの種、ごま、枝豆、そら豆
オメガ3脂肪酸アマニ、チアシード、クルミ、ヘンプシード、エゴマ、藻類(微細藻類)由来のサプリメント*おすすめ

ビタミンB12ビタミンDを含んでいる植物性食品は非常に少ないので、サプリメントの使用が求められます。

また、消化吸収がしづらい亜鉛と体内でDHA・EPAに変換されにくいオメガ3脂肪酸も、サプリメントからの摂取がおすすめです。

ヴィーガンに必要なサプリメントについては、こちらの記事「ヴィーガン初心者必見!栄養失調にならないための必須栄養素8選」で解説していますので、ぜひご一読ください。

対処法⑤ ジャーナリング

ジャーナリングとは、頭に浮かんだことをそのまま紙に書き出す「書く瞑想」と呼ばれるものです。心理的ストレスを軽減したり、感情をコントロールしたり、トラウマを緩和したりなど、精神の健康をサポートしてくれます。

ジャーナリングするときに一番大切なのは、自分の感情を否定しないこと。動物搾取に対する怒り、悲しみ、絶望感など、あなたの優しさから生まれる自然な反応を、誰にも見せないノートにありのままに書き出していきます。

やり方に厳格なルールはありません。その時に感じていることや考えていることを、文章のまとまりや誤字脱字など一切気にせず、思いっきり自由に書き綴ってください。文章にするのが難しければ、箇条書きや単語だけでもOKです。

【ジャーナリングのやり方】

  1. ノートとペンを用意する。
  2. 静かでリラックスできる環境を整え、誰にも邪魔されない時間を確保する。
  3. 自分の感情を見つめ、頭に浮かんできたことを思いつくままどんどん書き出す。
  4. 書き終わったらノートを見返し、自分の内面を観察しながら心を整理する。

ジャーナリングで心の中に溜まったネガティブな感情を吐き出し続けていると、1週間で変化を感じ始めます。さらに1ヶ月以上継続すると心のもやもやが浄化されて気持ちが軽くなり、ヴィストピアの症状が軽減されていきます。

対処法⑥ 動物のための小さな行動

ヴィーガンにとって動物虐待が蔓延する社会は、まるで血と恐怖のホラー映画のようです。しかし、何もせずに悲しんでいるだけでは状況は変わりません。

じっとしていると余計に心が落ち込み、無力感や絶望感に飲み込まれてしまいます。自分に無理のない範囲でできることを見つけて、小さなことから行動してみましょう。

「自分は少しでも動物たちの役に立てている」という安堵感が、ヴィストピアの苦しみを緩和してくれます。

【おすすめの小さなヴィーガン活動】

  • SNSで発信する:「今日こんなヴィーガン料理作ったよ」「この商品、動物性不使用なのに美味しかった!」など、軽いシェア感覚でポストします。
  • 家族や友人にヴィーガン料理をふるまう:大げさに「ヴィーガン料理だよ!」と宣言しなくても、「美味しい料理」として出すだけでOK。楽しんでもらうことが重要です。
  • お気に入りのヴィーガン食品をリピ買い:スーパーやコンビニ、通販などで買える植物性のラーメンや代替肉などをリピートします。「美味しかった!」という口コミも忘れずに。
  • レストランやカフェでヴィーガン対応を尋ねる:「ヴィーガン対応できますか?」と一言聞くだけでも店側に需要が伝わり、未来の選択肢が増えます。
  • ヴィーガンドキュメンタリーをSNSでシェアする:「知らなかった」「勉強になった」などの感想も一言添えて。押し付けにならず「そういう考え方もあるんだ」と伝わります。
  • ヴィーガンメッセージが書かれた商品を使う:「Go Vegan」などのヴィーガンメッセージが入ったエコバックやマイボトルなどを使用してアピールしましょう。会話のきっかけになるかもしれません。
  • 小さな寄付をする:動物保護団体やヴィーガン関連のプロジェクトに、少額でも寄付してみましょう。100円でも「応援しているよ」という気持ちが伝わります。
  • 署名運動に参加する:動物保護や環境に関わるネット上の署名運動に参加してみましょう。サインするだけで動物たちを救う活動を後押しできます。おすすめはオンライン署名サイトChange.org

対処法⑦ 仲間とつながる

ヴィストピアの最大の敵は「孤立」と「孤独」です。特に身近にヴィーガンの仲間が一人もおらず、家族や友人にも理解されない状況では、「自分だけがこの苦しみを抱えている」という感情が強まり、ヴィストピアの症状はさらに深刻になります。

この孤独を癒すうえで何より大切なのは、同じ価値観を共有できる仲間を見つけることです。たとえ近くにヴィーガンがいなくても、動物搾取の問題についてあなたと同じように心を痛めている人は、世界中に、そして日本の各地にも必ずいます。

日々の想いを仲間と分かち合うだけで、「自分は一人じゃない」と実感できるはずです。

【仲間を作るためにおすすめの行為】

  • SNSでつながる:ヴィーガン関連のハッシュタグ(#ヴィーガン や #VeganJapan など)を使って投稿し、共感できる人をフォローしたり交流したりしてみましょう。
  • ヴィーガンフェスやマルシェに参加する:ヴィーガンの飲食店や食品ブランドが主催するイベントに足を運び、出展者や来場者との会話を楽しみましょう。
  • ヴィーガンカフェやレストランを訪れる:同じ考えやライフスタイルを持つ人と出会いやすく、食事を通じて情報交換ができます。
  • 動物保護団体のボランティアに参加する:共通の価値観を持つ人たちと協力することで、深い絆を築くことができます。
  • ヴィーガンのオンライン勉強会やワークショップに参加する:ヴィーガンの栄養学や動物産業がもたらす環境問題について学びながら、学習意欲の高い仲間と出会えます。

ただし、無理して大勢と繋がる必要はありません。あなたの思いを分かってくれるヴィーガンの仲間が一人いるだけでも十分です。「小さな一歩」が、未来の心強い仲間との出会いに繋がっていくので、ぜひ勇気を出して行動してみてください。

この記事は、クレア・マン博士の研究と著作に基づいています。ヴィストピアについてより詳しく学びたい方は、彼女の著書「Vystopia|The Anguish of Being Vegan in a Non-Vegan World, by Clare Mann(ヴィストピア|非ヴィーガン世界でヴィーガンであることの苦悩)」をお読みください。
*紀伊国屋書店(新宿本店、渋谷店、東京店)など、英語書籍取扱店で購入できます。

まとめ:あなたへのメッセージ「自分を誇りに思い、強く生きよう」

愛の手紙とピンクのバラ

最後に、15年以上ヴィストピアと付き合ってきた双子から、あなたにお伝えしたいことがあります。

ヴィーガンのうつである「ヴィストピア」は、完治しません。

なぜなら、この世界から動物搾取が完全になくならない限り、ヴィストピアの根本原因は消えないからです。この事実は、絶望的に思えるかもしれません。

双子自身、今でもスーパーの精肉・鮮魚コーナー、卵パックや牛乳パックの棚の前を通り過ぎるたびに、胸が張り裂けそうになります。会食の席で楽しそうにお肉やお魚、卵やチーズを食べる友人たちを見て、言葉にならない寂しさに襲われます。

社会に蔓延する動物搾取を止められない自分たちの無力さに失望し、「こんな何もできない双子に生きている価値なんてない、死んでしまいたい」という黒い感情(希死念慮)が、何度も何度も浮かんできます。

でも、私たちヴィーガンが逃げ出すわけにはいかないのです。私たちが諦めてしまったら、動物たちの苦しみは未来永劫続いてしまうからです。

双子の夢は、動物と人間が平和に共生する「ヴィーガン世界」を創ることです。しかし、それが叶うのは何百年、何千年先のこと。残念ですが、双子が生きている間には望めない景色です。

でも、希望はあります。今、この残酷な動物搾取に気づいた人たちがヴィーガンとなり、ヴィーガニズムという「種」を蒔くのです。その種はすぐには芽吹かないかもしれません。しかし、めげずに蒔き続ければ、いつの日か未来のヴィーガンたちが「ヴィーガン世界」という豊かな実りを収穫してくれるはずです。

ヴィストピアは完治しません。でも、その「心の痛み」を乗りこなし、飼いならし、共に生きていくことはできます。

今回ご紹介した感情解放テクニックや呼吸瞑想法を実践し、ビタミンB12やビタミンD3のサプリを摂り、SNSや署名活動など自分にできる行動を続け、ヴィーガンの仲間を探し、ときには思い切り泣き、ときには情報を遮断して休む。そうやって自分の心を守りながら、非ヴィーガン社会で強くしなやかに生きていきましょう。

あなたは一人ではありません。

世界中にあなたと同じ痛みを知り、同じ夢を見るヴィーガン仲間がいます。その仲間たちは、あなたの幸せを心から願っています。

動物たちを救いたいと思う、あなたのその優しさと強さを、どうか誇りに思ってください。

動物たちを人間の支配から解放し、彼らの権利と尊厳を取り戻し、ヴィーガン世界を実現するその日まで、双子と共に歩き続けましょう。

相談窓口のご案内

心がつらいと感じたときは、一人で抱え込まずに専門の相談窓口を利用することも大切です。気軽に(匿名で)利用できるので、安心してご活用ください。

  • よりそいホットライン: 0120-279-338(フリーダイヤル、年中無休・24時間対応)
双子

大切なのは「自分にできることを、無理なく毎日続ける」こと。その小さな積み重ねが、ヴィストピアに負けない心の土台を育ててくれるよ。頑張ってね!

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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