
植物主体の食事にはプラントベース、ベジタリアン、マクロビオティック、精進料理があります。これらは単なる食事ではなく、それぞれ独自の思想があり、それに共鳴した人たちがおのおのが提唱する食事法を取り入れています。
ヴィーガンも同様に、独自の思想に基づいた食事法を実践しています。
これら5つの食事法の共通点は「植物を主体に食べる」ということですが、歴史も、定義も、食べるものも、食べないものも、目的も、まったく異なっています。
それぞれの食事法を一言で説明すると、
- ヴィーガンは、動物や環境のために
- プラントベースは、健康維持や減量のために
- ベジタリアンは、宗教や信念のために
- マクロビオティックは、調和と長寿のために
- 精進料理は、仏教の修行のために
植物を中心とした食事をしている、となります。植物を主体に食べることは同じなのに、これほどまでに違う目的があるなんて、とても興味深いですよね。
本日はヴィーガン歴15年以上の双子が、「ヴィーガンと植物主体の食事(プラントベース・ベジタリアン・マクロビ・精進料理)の違い」について詳しく解説いたします。

- 料理人
- ヴィーガン歴15年以上
- NZ国立Toi Ohomai工科大学とWaikato工科大学で2年間料理を学び、同国のレストランで4年間修業
ヴィーガン・プラントベース・ベジタリアン・マクロビ・精進料理の共通点は「植物主体」

ヴィーガン、プラントベース、ベジタリアン、マクロビ、精進料理に共通しているのは、植物が主体の食事を食べるということです。
植物が主体と言っても、植物しか食べないヴィーガンとは違い、そのほかの4つの食事法では動物性食品も食べます。
(ヴィーガン以外の)植物主体の食事で重要なのは、動物性食品よりも植物性食品を「優先的に食べる」ということです。
例えば食事の全体量が10だとしたら、植物性食品を7~9食べて、動物性食品を1~3食べるのが、(ヴィーガン以外の)植物主体の食事法です。
ヴィーガン食や植物主体の食事がもたらす健康上のメリット

植物には食物繊維のほかにも、動物性食品からは得られない必須栄養素のビタミン、ミネラル、フィトケミカル、抗酸化物質などが豊富に含まれています。
そのためヴィーガン食や植物主体の食事には、以下のような健康上のメリットがあると示唆されています。
1)心血管疾患のリスクを軽減する。
- 植物に豊富に含まれる食物繊維は消化器系でコレステロールに結合し、血流への吸収を防ぐことでコレステロール値を下げるのに役立つ。これによりアテローム性動脈硬化症や心血管疾患の発症リスクが軽減される。
- 植物主体の食事には、心血管疾患の危険因子である悪玉コレステロールを増加させる飽和脂肪酸が非常に少ない。そのため健康的なコレステロール値が維持される。
- ナッツやシード、アボカドやオリーブ油などに豊富に含まれる植物性脂肪の不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロール値を低下させ、心臓血管に良い影響を与える。
- 植物に含まれる天然化合物のフィトケミカルには抗酸化作用と抗炎症作用があり、酸化ストレスと炎症を抑えて、心臓血管疾患のリスクを減少させる。
- 植物主体の食事は血圧を低下させ、高血圧による心血管リスクを防ぐ。
2)2型糖尿病のリスクを軽減する。
- 植物主体の食事に豊富に含まれる食物繊維は、血流中のブドウ糖の吸収を遅らせ、血糖値の急上昇を防いで血糖をコントロールし、2型糖尿病の発症を予防する。
- 植物主体の食事には、2型糖尿病の危険因子であるインスリン抵抗性と関連のある飽和脂肪酸がほとんど含まれていない。飽和脂肪酸が少ないと、健全なインスリン感受性が維持される。
- 植物性の脂肪(ナッツ・シード、アボカド、オリーブ油など)には、不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、インスリン感受性を改善して2型糖尿病の発症リスクを軽減する。
- 動物性タンパク質の摂取量が少ないと、インスリン抵抗性(インスリンの効果を発揮できない状態)や耐糖能障害(空腹時の血糖値が正常より高い状態)が改善され、2型糖尿病のリスクが減少する。
- 植物に含まれる天然化合物のフィトケミカルには抗酸化作用と抗炎症作用があり、体内の酸化ストレスと炎症を抑えて、2型糖尿病のリスクを減少させる。
3)癌のリスクを軽減する。
- 植物に含まれる豊富な食物繊維は血流中のブドウ糖の吸収を遅らせ、癌の増殖を促進する血糖値の上昇を防いで、結腸直腸がんや乳がんなどの発症リスクを軽減する。
- 植物に含まれる天然化合物のフィトケミカルが持つ抗酸化作用と抗炎症作用は、体内の酸化ストレスと炎症を抑え、癌の発症リスクを減少させる。
- 動物性タンパク質の摂取が少ないと、癌の増殖を促進する可能性のあるインスリン抵抗性や炎症が抑えられ、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がんなどの発症リスクを軽減できる。
- 植物主体の食事には、乳がんや結腸直腸がんなどの癌の発症と関連がある飽和脂肪酸が少ない。
- 植物主体の食事には健康な免疫システムを維持し、癌を予防するために必要な抗酸化物質のビタミンとミネラルが豊富に含まれている。
4)アルツハイマー病の発症を軽減する。
- 植物主体の食事には、体内の酸化ストレスの軽減に役立つ抗酸化物質が豊富に含まれている。酸化ストレスはアルツハイマー病の主な原因のため、酸化ストレスを軽減することで病気の予防、または進行を遅らせることができる。
- 植物に含まれる天然化合物のフィトケミカルが持つ抗酸化作用と抗炎症作用は、アルツハイマー病の一因となる体内の炎症を抑え、発症リスクを軽減する。
- 植物主体の食事には、アルツハイマー病の発症と関連のある飽和脂肪酸が少ない。
- 植物主体の食事には、炎症を抑えて腸の健康を改善する食物繊維が豊富に含まれている。腸の健康と脳の健康には関連があり、腸の健康を維持することがアルツハイマー病の予防に役立つと示唆されている。
- 植物からは、健康な脳を維持するために不可欠なビタミンとミネラルが摂取できる。葉物野菜、ベリー類、ナッツ・シード、全粒穀物などに含まれるビタミンE、ビタミンC、ベータカロテンは強力な抗酸化物質であり、アルツハイマー病のリスクを減らし、認知機能の低下を遅らせることができる。
それでは、ヴィーガン、プラントベース、ベジタリアン、マクロビ、精進料理について、一つずつ解説していきます。
ヴィーガン

ヴィーガンの歴史
遥か昔から、ギリシャ、インド、中国などの世界各地で、動物性食品を摂取しない人々のグループは存在していました。
しかし現代の「ヴィーガン」ムーブメントは、英国ベジタリアン協会の会員だった、動物愛護活動家ドナルド・ワトソン氏(1910ー2005)から始まっています。
1944年、肉や魚は食べないけれど卵と乳製品は食べるベジタリアンと、動物愛護精神から動物性食品を一切食べない人を区別するための言葉を探し続けていた彼は、ついに自分で創作することにします。
そうして「ベジタリアン・VEGETARIAN」の最初の3文字「VEG」に最後の2文字「AN」を足した新たな用語、「ヴィーガン・VEGAN」が誕生しました。
この「ヴィーガン・VEGAN」という名称は、「倫理的や道徳的な理由から、動物性食品を排除する」という概念を表わしています。
またワトソン氏は、「VEGAN」誕生と同時に英国ヴィーガン協会も創設しました。
ヴィーガン協会の成長を記した小雑誌「ヴィーガン協会の70年(英文)」はこちらからお読みいただけます。
ヴィーガンの定義
1951年に定められたヴィーガンの定義は、以下の通りです。
1951年 ヴィーガン協会
- ヴィーガニズムという言葉は、人間は動物を搾取せずに生きるべきだという教義を意味するものとする。
- ヴィーガン協会はその目的を達成するために、人間による食糧、日用品、労働、狩猟、生体解剖、および人間による動物の生命の搾取を含むあらゆる用途のための人間による動物の利用を終わらせることを誓約する。
- 当協会の目的は、人間による動物搾取を終わらせることである。
その後修正が加えられ、1988年に今の形になりました。
1988年 ヴィーガン協会
- ヴィーガニズムとは、実行可能な限り、食物、衣類、その他の目的のために動物を搾取し虐待する、あらゆる形態を排除しようとする哲学であり生き方である。
- さらに言えば、動物、人間、環境の利益のために、動物を使用しない代替品の開発と使用を促進する。
- 食事用語では、全体的または部分的に動物由来の製品を一切使用しない習慣を意味する。
つまり「ヴィーガン」は、
動物性食品をまったく食べず、
動物由来の素材で作られた衣料品を身につけず、
動物性原料から作られた商品は使わず、
動物で実験された化粧品も使用せず、
動物を使用した娯楽施設にも行かない人
のことを指しています。
ヴィーガンとは単なる食事法ではなく「倫理的信念」なのです。
ヴィーガニズムについてさらに知りたい方は、『ヴィーガニズムとは究極の平等思想、ヴィーガンとはその思想を実践する人』の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
ヴィーガンが食べるもの・食べないもの
ヴィーガン食では植物性食品だけを食べ、すべての動物性食品を排除します。
- 野菜
- 果物
- 豆・大豆製品
- ナッツ・シード
- 穀物
- きのこ
- 海藻
- 代替え食品(大豆ミート、セイタン・小麦タンパク、植物性チーズ、植物性バターなど)
- ハーブ・スパイス
- ドライフルーツ
ヴィーガンが食べるものについては、『【菜食料理人が教える】ヴィーガンが食べられる食材一覧|買い物リスト付き』の記事で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
- 肉
- 食肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ジャーキー、サラミ)
- 臓物・ホルモン
- 獣脂(ラード・牛脂・鶏油)
- 魚介類
- 水産加工品(蒲鉾、はんぺん、カニカマ、さつま揚げ、魚肉ソーセージ、干物)
- 魚醤・ナンプラー
- 卵・卵製品
- 牛乳・乳製品
- ハチミツ
- 昆虫
- ゼラチン
- ホエイ
- コラーゲン
- 動物由来の添加物
- 動物由来成分を使用したサプリ
ヴィーガンが食べないものについては、『【菜食料理人が教える】ヴィーガンが食べられない食材一覧|食べない理由付き』、『【完全版】ヴィーガンは気をつけよう!動物由来の食品添加物一覧』の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
ヴィーガンになる目的
ヴィーガンが目指すのは「動物搾取の廃止」と「動物の解放」です。
食糧として、商品として、労働力として、狩猟の獲物として、生体解剖の実験台として、人間に搾取され続ける動物たちを解放し、巨大な動物搾取産業を完全に廃止することが、ヴィーガンの最終目的です。
この目標を掲げる人だけが、「ヴィーガン」という名称で呼ばれるのです。
ヴィーガンについてさらにお調べになりたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
プラントベース

プラントベースの歴史
「プラントベース」という用語は、1980年に米国コーネル大学の栄養生化学者である、T・コリン・キャンベル博士によって造られました。
キャンベル博士とは、中国農村部の食生活を10年にわたって研究し、その成果をまとめた名著『チャイナ・スタディ』の著者として有名な人物です。
『チャイナ・スタディ』では、「動物性タンパク質と脂肪が少なく、植物性食品が多い食事(植物主体食)」が、いくつかの病気の発生率を低下させることを証明しています。
キャンベル博士自身は、1990年頃から動物性食品を一切摂取しない「完全菜食」ですが、彼はあくまでも「健康のため」に完全菜食を実践しているのであって、ヴィーガニズム(動物搾取の廃止と動物解放)を支持しているわけではないと公言しています。
プラントベースの定義
「プラントベース」という用語は明確に定義されておらず、さまざまに解釈されているため、完全菜食の人もいれば、肉や魚、卵や乳製品を食べる人もいます。
一般的には、動物性食品よりも植物性食品の割合が多い食事のことを指します。
それをわかりやすくアピールするために、プラント・ベース(植物・主体)という名がつけられているのです。
英国栄養士協会では、次のように「プラントベースの定義」を説明しています。
英国栄養士協会
- プラントベースの食事は、野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツ、シードなどの植物由来の食品をベースにし、動物性食品をほとんど、またはまったく含まない。
- プラントベースの食事は植物のみである必要はなく、肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品を完全に除外する必要はない。
プラントベースが食べるもの・食べないもの
プラントベースでは、オーガニックや遺伝子組み換えをしていない農産物を中心に食べます。
- 野菜
- 果物
- 豆・大豆製品
- ナッツ・シード
- 全粒穀物(玄米、全粒粉、ライ麦、オーツ麦、蕎麦)
- 雑穀(キノア、アマランス、きび、アワ、ひえ)
- きのこ
- 海藻
- ハーブ・スパイス
- ドライフルーツ
- 肉
- 魚介類
- 牛乳・乳製品(低脂肪のもの)
- 卵
- ハチミツ
- ゼラチン
プラントベースでは、精製されたものや加工された食品を完全に避ける、または摂取をごく少量に制限します。
- 精製した穀物(白米、漂白小麦粉、白パン、うどん、ラーメンなど)
- 冷凍(惣菜)食品
- 代替え食品(セイタン、大豆ミート、植物性チーズ、植物性バター)
- 植物油
- 精製砂糖
- 人工甘味料
- 精製塩
- 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸
- スナック・お菓子
- ジャンクフード
- 食肉加工品(ソーセージ、ベーコン、ハム、サラミ)
- 水産加工品(練り物、ちくわ、はんぺん、カニカマ、魚肉ソーセージ)
- 清涼飲料水
- 遺伝子組み換え食品
プラントベースになる目的
プラントベースになる人の多くは、「減量」や「健康管理」を目的としています。
プラントベースの食事は脂質を極力使わないためカロリーが低く、食物繊維が豊富なので満腹感や満足感が持続し、食べ過ぎを防ぎます。
また植物が持つ抗炎症特性は、体重増加の原因となる体内の炎症を軽減し、体重の減少と健康改善に役立ちます。
肥満は心臓病や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、さまざまな病気の原因となるため、多くの人が「減量効果」を求めてプラントベースを実践しています。
ベジタリアン

ベジタリアンの歴史
ベジタリアン(菜食主義)は、歴史を通じてさまざまな文化に取り入れられ、肉を含まない食事の概念は、人類が誕生して以来存在し続けています。
ベジタリアンの最古の記録は、生きものを傷つけない「非暴力・非殺生(アヒンサー)」という戒律を守るヒンズー教徒とジャイナ教徒によるものです。紀元前1500年頃からはヒンズー教を、紀元前500年頃からはジャイナ教を通じ、インド各地でベジタリアン食(野菜、果物、穀物、豆、ナッツ、ハチミツ、乳製品)が実践されていました。
紀元前6世紀には、古代ギリシャの哲学者ピタゴラスが「動物を殺すことは人間の魂を残酷にする。人間が平和に共存するために菜食は重要である」と説き、その教えに従った「ピタゴラス派」が、菜食(野菜、果物、穀物、豆、ナッツ、ハチミツ、乳製品、魚介類)をおこなっています。ベジタリアンという言葉ができる以前、菜食は「ピタゴラス・ダイエット」と呼ばれていました。
1847年の英国では、キリスト教の聖書原理運動から派生した団体が「ベジタリアン」という用語を作り、「ベジタリアン協会」を設立します。1850年には同じ宗教の一派が、今度はアメリカで「アメリカ・ベジタリアン協会」を設立しました。これらの団体は聖書の「創世記第一章29節」に基づき、菜食を提唱しています。
神は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。」
創世記第1章29節
この聖句によって、神は人間にすべての植物を食べる許可を与えており、「植物が人間の食べ物」であると言及しています。
1863年、同じくアメリカで「セブンスデイ・アドヴェンティスト」というキリスト教団体が設立され、ベジタリアン食を普及させる菜食運動を始めました。
「ベジタリアン」は、宗教的動機から生み出された概念というわけです。
ベジタリアンの定義
ベジタリアンの基本は「屠殺された動物の肉や副産物は食べてはならない」というものです。その代わり、動物を殺さずに得たもの(卵、牛乳、ハチミツ)ならば、食べても良いとなっています。
ただ、ベジタリアンの定義は時代とともに変化し続けており、今ではさまざまなバージョンが生み出されています。
- ラクト・オボ・ベジタリアン:肉、臓物、魚介類は食べないが、乳製品と卵とハチミツは食べる。
- ラクト・ベジタリアン:肉、臓物、魚介類、卵は食べないが、乳製品とハチミツは食べる。
- オボ・ベジタリアン:肉、臓物、魚介類、乳製品は食べないが、卵とハチミツは食べる。
- ポロ・ベジタリアン :牛、豚、羊、ヤギなど四つ足の動物と魚介類は食べないが、鶏肉(七面鳥、鴨、アヒル、ガチョウ、鶉)と乳製品と卵とハチミツは食べる。
- ペスコ・ベジタリアン:肉、臓物は食べないが、魚介類と乳製品と卵とハチミツは食べる。
- オリエンタル・ベジタリアン:肉、臓物、魚介類、五葷(ごくん:玉ネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、ノビル、チャイブ)は食べないが、乳製品と卵とハチミツは食べる。
ベジタリアンが食べるもの・食べないもの
ここでは、一般的なベジタリアン(ラクト・オボ・ベジタリアン)の食材リストをご紹介します。
- 野菜
- 果物
- 豆類・大豆製品
- ナッツ・シード
- 穀物
- 海藻
- きのこ
- ハーブ・スパイス
- 乳製品
- 卵
- ハチミツ
- ホエイ(乳清)
- カゼイン(牛乳由来のタンパク質)
- 肉
- 臓物
- 食肉加工品(ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ジャーキー)
- 魚介類
- 水産加工品(ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、はんぺん、カニカマ、魚肉ソーセージ、干物)
- ブイヨン
- ゼラチン
- レンネット(子牛の胃液)
- コラーゲン
- 獣脂(ラード、牛脂、鶏油)
- 昆虫
ベジタリアンになる目的
今日、人々はさまざまな理由でベジタリアンになることを選択しています。
①健康改善のため:植物主体のベジタリアン食には、心臓病、糖尿病、癌、アルツハイマー病などを改善し、予防する効果のある植物が豊富に含まれています。
②環境への懸念:畜産における天然資源の過剰使用、放牧のための森林破壊、工場畜産による水質汚染や大気汚染など、畜産ビジネスは多くの環境問題を招いています。
③宗教的・文化的信念: ヒンズー教やジャイナ教、一部のキリスト教は、すべての生き物に対する非暴力と非殺生を実践する方法として、ベジタリアン食を推進しています。
肉は動物を殺すからダメだけれど、乳製品や卵の生産は動物を殺していないので「ベジタリアンは動物の命を救っている」と考える人たちがいます。
しかしこの考えは正しくありません。
確かに牛乳や卵を得るときに動物は殺されませんが、乳牛は4年後、採卵鶏は2年後に殺されることが確定しています。乳量が減り、産卵数が減るからです。
動物を傷つけないと思われている酪農業界と鶏卵業界は、畜産業界で最も残酷な飼育方法と言われています。
それらの飼育内容を知りたい方は、ぜひ次の2つの記事をご一読ください。
ポール・マッカートニーがナレーションを務める短編映画『Glass Walls』は、「屠殺場にガラスの壁があったら、誰もがベジタリアンになるだろう」という言葉で始まります。
しかし、もし酪農場と鶏卵工場にもガラスの壁があって、雌牛と雌鶏におこなわれていることがすべて丸見えだったなら、ベジタリアンではなく、誰もがヴィーガンになることを選ぶでしょう。
マクロビオティック

マクロビオティックの歴史
「マクロビオティック(Makrobiotik)」という言葉を始めて使ったのは、18世紀のプロイセン(現ドイツ)で医師をしていたクリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラント博士です。
1795年にフーフェラント博士が出版した『マクロビオティック:長生きするための技法』では、自然の恵みである農産物(野菜や肉)を適切に調理して食べ、神に与えられた命を最大限に生かしきり、完全な人間になるための「食養生法」が提唱されています。
その後(1890年頃)、明治時代の医師であった石塚左玄が、フーフェラント博士の説いたマクロビオティック(長生法)に感銘を受け、心身ともに健全な人間をつくる医食同源の食事法「食育」を確立すると、玄米食を基本とした「食養」を普及・実践する団体「食養会」を結成しました。
(1930年頃)その石塚左玄の「食養」の考えに影響を受けた桜沢如一が、左玄の「食養」に中国の「陰陽論」を組み合わせ、独自に進化させた「マクロビオティック(玄米菜食)」を考え出します。
その後(1950年以降)、門下の久司道夫がマクロビオティックを体系化し、本を出版して海外(特に欧米)へ広めたため、現在世界で「マクロビオティック」と呼ばれているのは、桜沢と久司によって改良された玄米菜食バージョンの「禅・マクロビオティック」のことです。
この日本版マクロビオティックは、1960~70年代に東洋の神秘的な文化(スピリチュアリズム)に関心のあった欧米の若者の間で大流行しました。
今ではマクロビオティックは「玄米菜食」と認知されていますが、フーフェラント博士の提唱したマクロビオティックに「菜食」という概念はなく、「植物性食品と動物性食品を組み合わせてバランスの取れた食事をする」という意味合いのものでした。
マクロビオティックの定義
マクロビオティックは、「マクロ(大きい)」「ビオ(生命・生物)」「ティック(学問・術)」を合成した言葉で、「生命を最大限に生かす」という意味があります。
日本発祥の「禅・マクロビオティック」には根幹となる「3つの基本」があり、食事はその基本に則って作られます。
- 身土不二:住んでいる土地(国)で採れる農作物を食べること。そうすれば、その土地(国)に適した身体になり、健康を維持することができる。
- 一物全体:食材は一つのものを全部丸ごと食べること。野菜なら皮ごと、魚なら内臓ごと、米なら精製せず玄米で食べ、調理中に灰汁も取らない。そうすることで、食材に含まれる全ての栄養素を摂ることができる。
- 陰陽調和:すべての食材にはそれぞれ陰と陽のエネルギーがあり、これらをバランスよく取り入れることで、体に調和と健康をもたらす。陰陽のバランスが崩れると病気を招くので、なるべく中庸に近い状態でいることが大切。
以下のリストにあるような、陰、陽、中庸の食材を、バランスよく選びます。
【陰性の食材】
- 野菜:ナス、トマト、ピーマン、もやし、レタス、キャベツ、トウモロコシ、竹の子、みょうが、椎茸
- 芋類:長芋、大和芋、さつま芋、じゃが芋、里芋
- 果物:バナナ、パイナップル、マンゴー、ぶどう、梨、桃、柿、アボカド、イチジク、スイカ、メロン
- 大豆製品:豆腐、豆乳、湯葉、きな粉
- 豆類:そら豆、うずら豆、ピーナッツ
- ナッツ:アーモンド、マカデミアナッツ
- 穀物:白米、漂白小麦粉、イーストのパン、うどん、素麺、ラーメン
- 調味料:精製塩、みりん、醸造酢、化学調味料、オリーブ油、コーン油
- 甘味料:ハチミツ、白砂糖、黒砂糖、米飴
- 香辛料:カレースパイス、ワサビ、コショウ、唐辛子、ショウガ、からし
- 乳製品:牛乳、バター
- 飲みもの:コーヒー、紅茶、緑茶、ソフトドリンク、アルコール飲料、ブランデー、ビール
【中庸の食材】
- 野菜:大根、カブ、白菜、小松菜、トウモロコシ、ホウレン草、
- 果物:イチゴ、きんかん、いよかん、ミカン、栗
- 大豆製品:納豆、油揚げ、高野豆腐、がんもどき
- 豆類:小豆、えんどう豆、黒豆
- 種子:黒ゴマ、白ごま、練りごま
- 穀物:玄米、天然酵母パン、蕎麦、玄米餅、大麦、雑穀(ひえ、きび、あわ)
- 海藻:昆布、ワカメ、ヒジキ、青のり、天草、もずく
- 調味料:菜種油、椿油
- 飲みもの:ほうじ茶、ヨモギ茶、三年番茶
【陽性の食材】
- 野菜:ゴボウ、玉ねぎ、人参、レンコン、かぼちゃ、ニラ、ネギ、ニンニク、ブロッコリー、生姜、ふき、朝鮮人参
- 果物:リンゴ、サクランボ、アプリコット、ドライフルーツ
- 動物性食品:牛肉、鶏肉、ハム、ソーセージ、ベーコン、卵、チーズ
- 魚介類:ヒラメ、カレイ、鯛、鮭、イカ、タコ
- 穀物:雑穀、蕎麦、全粒粉、もち米、大麦、セイタン
- 調味料:自然塩、味噌、醤油、梅干し
- 香辛料:シナモン
- 飲みもの:たんぽぽコーヒー、梅醤番茶、日本酒
マクロビアンが食べるもの・食べないもの
禅・マクロビオティックでは、地元で採れた有機や自然農法の農産物を使います。
ほとんどが日本の伝統食材なので馴染みがあり、購入しやすいという利点があります。
- 全粒穀物(玄米、雑穀、全粒粉、蕎麦)
- 野菜
- 果物
- 豆類・大豆製品
- きのこ
- 海藻
- ナッツ・シード
- 魚介類
- 肉
- 卵
- 乳製品
- ハチミツ
- 自然塩
- 味噌・醤油
- 梅干し
- 植物油
- 黒砂糖・キビ砂糖
- 甜菜糖
- 玄米飴
- 麦飴
- メープルシロップ
- 甘酒
マクロビオティックで禁止されている食べ物はありませんが、できるだけ避けた方がよい食品はあります。
- 精製された穀物(白米、漂白小麦粉)
- 白砂糖
- 人工甘味料
- 化学調味料
- 添加物入りの加工食品
- 精製塩
- 食肉加工品(ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ)
- 清涼飲料水
- ソフトドリンク
- スナック・お菓子
- 合成酒
マクロビアンになる目的
マクロビアンが目指すのは、「自然と調和しながら、健康で長生きすること」です。
禅・マクロビオティックの食事を実践することで、それまでに蓄積された毒素が排出され、体の痛み(精神の悩み)は軽減し、心は明晰になり、正しい判断能力が戻ってくると言われています。
精進料理

精進料理の歴史
今から約2500年ほど前のインドで、釈迦によって「仏教」が開かれました。
釈迦は王室出身ですが、悟りを得るために断食の苦行を行うなど極端な人生を経験した末に、どちらにも偏らない「中道(ちゅうどう)」の生き方に目覚めます。
インドではすでに、肉食を穢れ(けがれ)と考える「菜食主義」思想がありましたが、釈迦は中道の立場から動物も植物も両方食べており、衆生に肉食を禁止したことは一度もありません。
当時の仏教の僧侶は労働をすることが禁止されていたので、自分で料理をせずに人々から托鉢でもらったものを食べて生きていました。そのため、選り好みせずに、何でもありがたく頂くという考えだったのです。
その後インドの仏教は中国へと伝来し、その中にはボーディダーマという禅宗(坐禅修行を通して悟りを開く)の開祖がいました。
禅の修行者はどんどん増えていきましたが、禅道場は山奥に建てられたため、インドのように人々からの托鉢では食事を賄えません。しかも中国にそうした習慣はなかったため、禅の修道者たちは仏教の戒律を破り、禁止されていた「労働」をすることにしました。
禅宗は「自分たちで食事を作ること」を修行の一環として定め、重要視することにしたのです。
500年頃の中国では、仏教に傾倒した梁武帝(南朝梁の初代皇帝)が不殺生を徹底させ、僧侶に対して肉食を禁止したので、仏教を修道する人々の食事は「菜食」となりました。
中国の仏教が日本に伝わると、675年天武天皇の勅令によって、同じく僧侶の肉食が禁止されます。
平安時代中期には、比叡山の天台宗、高野山の真言宗で、植物主体の「精進料理」が作られるようになりました。
精進料理の定義
精進料理とは「仏教を修道する人に施される食事」のことであり、修行に集中できるように刺激のあるものや匂いのあるものは避け、素材の味を生かす調理法で作る、といった特徴があります。
精進料理の基本は「五味:甘味、酸味、辛味、苦味、塩味」「五色:赤、黄、緑、黒、白」「五法:生、煮る、蒸す、焼く、揚げる」で、これらを用いてさまざまな料理が作られます。
精進料理のベースは質素な「一汁一菜」ですが、お寺の宿坊で提供される精進料理は「一汁五~七菜」など品数が多く、懐石料理のように豪華な食事が楽しめます。
匂いの強い野菜(玉ネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、らっきょう)は「五葷(ごくん)」と呼ばれ、食べると精力がつきすぎて淫欲が湧き、煩悩を刺激して修行の妨げになるという理由から禁止されています。
精進料理は「菜食」というイメージがありますが、実際は肉も魚も使われています。そもそもインドの仏教は「菜食」を採用しておらず、釈迦自身も菜食ではありません。
しかし仏教戒律の「五戒」には「生き物を故意に殺してはならない」という「不殺生戒」があり、これは衆生の命を奪うことを禁じたものですが、動物や昆虫の命を奪うことを禁じる意味も含まれています。
この矛盾を正すために「三種の浄肉」が定められ、現在の精進料理の定義にもなりました。
- その動物が殺されるところを、自分は見ていない
- その動物が殺されたことを、自分は聞いていない
- その動物は、自分のために殺されたわけではない
この3つの条件を満たしていれば、動物性食材を食べても戒律違反にはならない。
つまり「三種の浄肉」とは、
自分は動物や魚を殺さないが、
ほかの誰かが自分の見えない場所で、
自分に絶対に知られないように、
こっそりと殺してその事実を自分に伝えなければ、
その肉や魚は食べてもいい
という意味です。
そのためスーパーなどで売られている、屠殺場で処理された肉や魚は、精進料理に安心して使える食材と言えます。
精進料理で使われる食材・使われない食材
精進料理は「菜食」ではありません。動物性食品も植物性食品も、両方使うことができます。
- 野菜
- 果物
- 豆類
- 大豆製品(豆腐、高野豆腐、湯葉、油揚げ、がんもどき、厚揚げ、納豆、豆乳、きな粉)
- ナッツ・シード
- きのこ
- 海藻
- 肉
- 魚
- 水産加工品(練り物、ちくわ、蒲鉾、はんぺん、カニカマ、干物)
- 乳製品(牛乳、チーズ、バター、生クリーム)
- 卵
- 調味料(醤油・味噌・砂糖・塩・みりん、酢)
- こんにゃく
- ダシ(かつお節、煮干し、椎茸、昆布、炒り大豆)
精進料理には、辛味や匂いの強い食材は使えません。
- 玉ネギ
- ネギ
- にんにく
- ニラ
- らっきょう
- のびる
- 万能ねぎ
- チャイブ
- ポアロネギ(リーク)
- 行者にんにく
精進料理を食べる目的
敬虔な仏教徒が精進料理を食べる理由は、悟りを開いて仏陀に近づくためです。
精進料理は作るのも食べるのも、悟りを開くための修行の一環となっています。
仏教戒律に則った食事を通して釈迦の教えを学び、仏道を極めるために精進料理を食べるのです。
多くの日本人が「精進料理は菜食料理」と勘違いしているため、日本に来たヴィーガンの外国人に精進料理を勧めてしまうことがあります。
精進料理とヴィーガン食は全く違うものです。
ヴィーガンが日本の仏教文化である「精進料理」を体験したい場合は、宿坊に事前に連絡してヴィーガンに対応してくれるかどうか尋ねる必要があります。
まとめ:ヴィーガンは菜食、プラントベース・ベジタリアン・マクロビ・精進料理は雑食

今回は、ヴィーガンと植物主体の食事(プラントベース・ベジタリアン・マクロビ・精進料理)の違いや、それぞれの歴史・定義・目的・食材などについて解説しました。
ヴィーガンは完全菜食ですが、プラントベース・ベジタリアン・マクロビオティック・精進料理は菜食ではありません。
それぞれの食事法に使われる食材を、分かりやすく表にしてみました。
食材名 | ヴィ | プラ | ベジ | マク | 精進 |
---|---|---|---|---|---|
肉 | ✖ | 〇 | ✖ | △ | 〇 |
魚介類 | ✖ | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 |
卵 | ✖ | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
乳製品 | ✖ | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
ハチミツ | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ゼラチン | ✖ | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 |
獣脂 | ✖ | 〇 | ✖ | △ | 〇 |
昆虫 | ✖ | 〇 | ✖ | △ | 〇 |
動物添加物 | ✖ | ✖ | △ | △ | 〇 |
加工食品 | 〇 | ✖ | 〇 | ✖ | 〇 |
植物油 | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 |
砂糖 | 〇 | ✖ | 〇 | ✖ | 〇 |
塩 | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 |
現在多くの人が、動物性食品よりも「植物性食品を優先して食べる食事法」に興味を持っています。
それぞれの食事法には、それを実践する人の信念と価値観があり、どれが良いとか悪いとか言えるものではありません。自分の思想に合う食事法を選ぶことが一番です。
ただ、世界中で行われている動物搾取や畜産による環境破壊を憂い、「自分に何かできることはないか?」と考えている方へのおすすめは、「ヴィーガン一択です」とお伝えしたいと思います。

ヴィーガンはベジタリアンとマクロビは食べられないけど、ヴィーガン対応のプラントベースと精進料理なら食べられるよ。外食するときはお店に確認してみてね!
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。